ジョブズをダシにビジネスマンに検査入院を勧めてみる話(R)

「大丈夫、あなたがいなくても会社は回ります。スティーブ・ジョブズが亡くなっても、アップルはつぶれてません」
仕事があるから検査入院できない、とかたくなに拒否するビジネスマンにぼくは言った。
おれはジョブズよりもすごいんだ、ジョブズごときと一緒にしないで欲しいとか、ジョブズが生きてたら毎日充電が必要な腕時計なんて売らないはずだ、なんて反論されたらどうしよう。

 

「そりゃあ数日は混乱するかもしれないけれど、ちゃんと誰かがその穴を埋めるから大丈夫です。
私の場合だって私がいなくなってもこの病院はつぶれないんです。どこかから誰かが代わりのドクターを連れてきて、私の穴を埋めますからね。
自分がいなくなっても大丈夫っていうのは、男としてはちょっとさみしいですけれども」
かすかに彼がうなずく。

 

「究極的には自分がいなければ絶対に回らない仕事なんてないのかもしれませんね。
でもね、あなたが倒れたらご家族はどうします?
あなたが検査入院でしばらくいなくても仕事は回るけど、あなたが病気でいなくなったら、家庭であなたのかわりになる人は誰もいないんじゃないでしょうか。
家族にとって、あなたはかけがえのない存在なんです。仕事のために無理して倒れて家族を泣かせたら大変だから、そうなる前にきちんと検査入院して徹底的に調べませんか」
ぼくがそう言うと、渋々とそのビジネスマンは検査入院に同意したのだった。

 

独身だったらこの手は使えないので、家庭云々とたたみかける前にそっとぼくは彼の左手をチェックしておいた。
彼の左手には結婚指輪がはまっていたのはもちろんだし、手首にはアップルウォッチもついていなかった。

*実話を元にしたフィクションです。念のため。
(FB2015年3月26日を再掲)

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