<青春とは人生のある期間ではなく
心の持ちかたを言う。
薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
たくましい意志、ゆたかな想像力、炎(も)える情熱さす。
青春とは人生の深い泉の清新さをいう。>
詩人サムエル・ウルマンの詩の一節である(サムエル・ウルマン 「青春とは、心の若さである。」 角川文庫 平成8年 p.22-23)。
松下幸之助氏もこの詩を好み、アレンジして「青春とは心の若さである」とよく述べた。
同僚のドクターが言った。
「同じ80代でも、ずいぶん人によって雰囲気が違うよね。
失礼ながらくたびた方もいるし、ピカピカに磨きあげたクラシックカーのような人もいる」。
ハバナに行ったときに、噂どおり1950年代のアメリカ車がわんさか街を走っているのに驚いた。そのころはまだアメリカと国交回復していなかったので、アメリカから新しい車が入ってこず、昔輸入されたアメ車をみな手入れをしながら乗っている。
電子工学の固まりのような今の車と違い、昔のアメ車は構造がシンプルなこともあって、キューバ人はたいていの故障は自分で直してしまうという。
フォードにビュイック、ポンティアック。アメリカン・グラフティでブルース・ブラザーズなでかくて輝かしいいまだに現役なクラッシックカーたち。
あの体制の中で生まれ育ちたいとは思わないけれど、お気楽旅行者のぼくとしてはハバナの現役クラシックカーにはまた会ってみたい。
そんな話をしたら友人のRが言った。
「ピカピカに磨きあげた50年代のアメ車か。コンパイ・セグンドだね」
Rによれば、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』で名をはせたコンパイ・セグンドは93歳のときにこんなセリフを残したそうだ。
「人生で大切なものは、女と花とロマンスだ。私は今も現役だ。子どもは5人いるが、今6人目を作っている」
93歳でこの色気。まさに男の鑑。ちょっとは枯れろよ。
<スペインの諺に、三十歳までは女が暖めてくれ、そのあとは一杯の酒が、またそのあとは暖炉が暖めてくれる、というのがある>(北杜夫『どくとるマンボウ青春記』新潮文庫 平成12年 p.285)。
コンパイ・セグンドに程遠く酒も飲めぬぼくは、最近暖炉のカタログを集め始めた(嘘)。
閑話休題。
日本の最大の課題は少子高齢化で、少子化だけはなんとかしないといけない。
けれど、心の若さに満ちあふれたピカピカのクラシックカーのような80代が、サルサとラム酒の香りのただよう街を颯爽と行く高齢化社会ならば、それはそれでちょっと見てみたいものである。
(FB2013年9月26日を加筆再掲)
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