3分診療のままでよいとは思わない。それでもなお、できることがある。
ここ数日、ネット上に「ロキソニン頭痛薬は死亡率50%!?」という記事が出回っている。
飲んだだけで死亡率50%なら、それはすでに薬ではなく毒だ。
題名で人目をひき本文を読ませる「釣り」記事の一種だ。
もちろんロキソニンに副作用がないといいたいわけではない。
薬を論じるときには、量も大事なのだ。
噂の「釣り」記事を読むと、表題の「死亡率50%」の根拠は2010年までロキソニンが劇薬指定されていたことにある。
本来ならその記事へのリンクを貼るべきだが、<ウソ、大げさ、まぎらわしい>インチキ情報が広まるのに加担するのも嫌だ。JAROってなんじゃろ。
さて、「釣り」記事文中によると、<50%致死量が1kgあたり300mg以下のものが劇薬に指定されている>とのこと。ここでやや悪質なのが1kgあたりの1kgが何を指すか示していないこと。これは本来、(薬を飲む人の)体重1kgあたり、という意味である。
(厚生労働省資料)
体重1kgあたり300mgのロキソニンを飲むと、飲んだ人の半分が死ぬ、というのが劇薬の定義だ。
50kgの人だと300mg/kg×50kgで15000mg(15g)のロキソニンをいっぺんに飲むという状況で、ロキソニンは1錠あたり60mgなので、一気に250錠飲むと50%の確率で死ぬというのがもともとの文意だ。ロキソニン250錠一気飲み。そんなに飲めばそりゃあ死ぬ。どんな頭痛も雲散霧消するが、命も落とす。
薬の効果や副作用を論じるときに、量の要素は大事だ。
お酒だって一滴舐めた場合と一升瓶一気飲みした場合では体の反応が違う。
コーヒーに含まれるカフェインだって超大量にとれば人を死に至らしめるわけで、実際にカフェインがたくさん入ったエナジードリンクの飲みすぎで亡くなった人もいる。
薬と車は似ている。
人間にとって有用だが、使いかたを間違えれば事故を起こす。
時速40kmで自動車を走らせれば事故も少ないが、時速300kmで走れば一般人なら<死亡率50%>かもしれない。
速度を無視して自動車の死亡率を論じても意味がないように、薬の死亡率を論じるなら
量を無視してはいけない。
極論すれば、薬も自動車も危険なものだが、危険を最小限にして有効に利用することこそ、人間の知恵というものなのだ。
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