ヌーボー・リッシュ的権力の使い方とは何かー義家弘介文科副大臣発言に想う。

「フフ……へただなあ、ヨシイエくん。へたっぴさ……!権力の使い方がへた……!ヨシイエくん、ダメなんだよ…そういうのが実にダメ…!」

ぼくのなかのハンチョウがささやいた。

6月13日配信の朝日新聞デジタルによれば、義家弘介文科副大臣自由党森ゆうこ氏の質問に対し、<「一般論」と断った上で、「告発内容が法令違反に該当しない場合、非公知の行政運営上のプロセスを上司の許可無く外部に出されることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」と述べた>という。

お金の使い方にうまい下手があるように、権力の使い方にもうまい下手がある。

一代で財を成した成功者がお金の使い方が下手だと「成り金」とカゲグチを叩かれる。横文字だとヌーボー・リッシュ/nouveau richeとか言ったりしますな。
お金の使い方があまりに露骨で、まわりの人に「俺は金もってるぜ!」とアピールしまくるようなのはそうやってバカにされる。

昔っからお金持ってる人ってのはもうちょっと抑制的に、人に見えないように使うものだ。なぜなら、おおっぴらにやると叩かれるのわかってるから。だから昔っからの金持ちってのは目立たぬように息を殺していきているってわけで、そういうのをノー・ブレス・オブ・リッチ/no breath of rich(金持ち息をせず)という。嘘だけど。

 

さて、急激にお金を持ってしまった人がお金の使い方を知らないように、急激に権力を持ってしまった人も権力の使い方を知らない。

自分が権力を持つ状態に慣れていないし、そうした状況が誇らしいもんだから、周囲に直接的に権力を見せつけるようなふるまいをしたりする。もしかしたら成り上がるまでに経験した辛酸や屈辱を晴らすようなルサンチマン的なところもあるのかもしれない。

でもね、それやると敵を作ったり足元すくわれたりするんですね。

ヌーボー・リッシュ的権力の使い方をしてしまうのはなにも個人だけではない。

以前に航空自衛隊のエラい人が勇ましすぎる論文を発表して問題になった。政府の公式見解と違う主張をしたというので任を解かれた。その後そのエラい人は自治体の長、首長選挙に出たりしてご活躍されたのだが、件の論文が出たときに僕は外交に詳しい友人に聞いてみたことがある。

陸上自衛隊海上自衛隊のエラい人は叩かれるような発言をしないのに、航空自衛隊のエラい人はときどき“勇ましすぎる”ことを言って叩かれたりするけどなんでなの?」
友人の説はこうだった。

陸上自衛隊海上自衛隊には、旧日本陸軍旧日本海軍時代の苦い思い出と経験があるから、力の見せ方・使い方に非常に慎重で抑制的なんだよね。航空自衛隊は戦前の前身がないから、よく言えばのびのびと、悪く言えば自分の言動が外からどう見えるかに無自覚なところがある」
友人の説がほんとかどうかは知らないが、一理ある気もする。

文官組織にもそうしたヌーボー・リッシュ的権力の使い方をしてしまう例がありそうだ。
2014年に設置された内閣人事局なんかもそういうところがありそうで、急に力を持つとその力を見せつけたがったりするのは人間のサガなんだろう。

昔っから権力を持ってる役所はたぶんもっと巧妙に洗練されたやり方でやる。
まったくもって想像だが、もしぼくが財務省のエラい人だったら敵対するような政治家のところには、何日にも何日にも渡って税務署を送り込んで帳簿の調査をずーーーーっとやって、なにかしらマズいところを見つけ出したり通常業務をストップさせたりするかもしれない。税金の調査は大事だからご協力願いたい。

 

また、「アメダマをしゃぶらせる」ようなやり方もあるかもしれない。
自分のところの省の政策に批判的な民間人がいたとする。舌鋒鋭く世論への影響も出始めたら、その民間人を取り込んじゃうのである。
省として正式に抗議・反論したり、圧力かけたりするとそうした反抗的な論客というのはかえって燃え上ってしまう。だから、なんらかの調査会や諮問委員会をでっち上げて、「ぜひとも先生のお知恵をお貸しください」なんていってその論客をそこの長に据えてしまう。で、半年とか一年とかそうした調査会や諮問委員会の仕事で忙殺させてうるさい口をだまらせるのだ。たぶんね、張り切ってやってくれる。
半年から一年もすれば世論もその論客のことなんか忘れてしまうから、レポートが出来上がったころにはその論客の影響力はなくなっている。出来上がったレポートは丁重に頂戴して大事に大事に役所の書庫の奥底にしまい続けておくわけだ。
まったくの想像ですけども。

さらに長年に渡り権力の使い方に習熟してくると、自分が権力をふるわないでも権力を発揮することができるようになる。

もっとも洗練された権力の使い方はもちろん、周囲に勝手に忖度させるような持って行き方で、そこまで行くには一代ではとても無理、何代にもわたって権力の座にあった者だけが到達できる達人の域である。

…と、そんな夢を見たところでぼくは目を覚ました。今日もまた朝が来た。
さわやかな一日のはじまりですね!今日も笑顔で張り切っていきましょう!

 そんじゃーね!

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