電子カルテ考(R改)

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国の方針で電子カルテが推進されて15年近くなる。病院ごとに電子カルテは違って、転勤してしばらくは新しい電子カルテに慣れるのに時間がかかったりして悩ましい。

開発メーカーは10社以上あり、最大手は富士通で、2015年度シェアは34%だそうだ。

電子カルテのシェア情報 | 電子カルテ、医療情報システムの開発・販売 - (株)ソフトウェア・サービス

なんだかんだ言って大手のものはよく出来てはいるが、この電子カルテというもの、結構あたり外れが大きい。ものによっては使いづらい点が少なくないのだ。医学用語は特殊なのでスムーズに語変換ができないと内心イラッとする。

特に年配の医師には電子カルテが苦手なかたもおられるようで、そうしたドクターは日々電子カルテにストレスをつのらせている。

あるベテラン医師は、ある日「こんなものやってられるか!!こんなものを打つためにオレは医者になったんじゃない!!」とブチ切れて、パソコンを丸ごと水没させて即日退職していったという。よっぽど嫌だったんでしょうね…。

 

電子カルテはもちろんメリットも大きい。一番大きいメリットは過去のデータや記載を即時に参照できることだ。

紙カルテの場合、ほかの人の字が汚くて読めないことがあって、.あの先生の字を解読できるのはあのベテランナースだけ、みたいなことも往々にしてある。古文書か。

 

さて、電子カルテ導入でやりがちなミスは、「彼はパソコンくわしいから適任だ」と、パソコン好きなドクターに一任してしまうことだ。
 日本に30万人以上も医師がいると中には患者を診るよりパソコンいじっているほうが好き、という人たちもいて、そうした人たちに電子カルテ導入を任せると時にとんでもないことになる。

 

三度の飯よりパソコンが好きなので電子カルテ選定・調整作業を続けること自体が目的化する。なにしろ電子カルテの選定・調整作業をしている間は給料もらいながら自分の好きなパソコンいじりが出来るのだ。この場合、自分の満足いくまで無限のマイナーチェンジをしつづけて永遠に導入できない、機能を盛りだくさんにしてかえって使いづらい、などなど大変なことになる。

ここらへんの事情は、「利害関係者が多い政策は、政策でマイナスの影響が出る担当省庁と対策を練るべし」(飯島勲 「リーダーの掟」 プレジデント 2010.12.13号)という鉄則に通じる。

 

つまり、実はパソコンが苦手な医師・職員こそが病院側の導入委員に最適なのだ。
もちろんメーカー側担当者とペアで作業を進めるのだが、パソコンが苦手な医師・職員はいやでいやで仕方がないから、できるだけシンプルなもので済まそうとする。
一番苦手な人でも使えるものができるから、そのほかの人は当然使える。
結果、シンプルで納期も短く、コストも低い電子カルテができあがる、はずだ。

 

なんでもいいけれど、もう少しストレスを減らしてくれるような電子カルテはできないものか。

ぜいたくは言わない、入力しやすくて検索しやすく、検査や処方を入力すると連動して病名登録もしてくれて、おまけに時々肩でも揉んでくれるような電子カルテがあれば、それ以上のぜいたくは言わないのだが。

 

参考:厚生労働省H13年通達「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインの策定について」http://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1226-1.html

(FB2013年2月20日を加筆再掲)

 

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