渡辺謙とIBMのワトソンが会話するCMを眺めながらふと思った。「渡辺謙の後が空いているな」と。もちろん僕が目指すわけではない。もし仮に自分が若くて売れない役者だったら、一か八かポスト渡辺謙ポジションを目指すのもアリだなと思ったのだ。
残念ながら国内の映画市場は縮小傾向。限られた主役の座はジャニーズじゃないと回ってこない。だが海外映画などではきっと、これから50年くらいはニンジャやサムライ的な登場人物の需要はあるだろう。ハリウッドの熾烈な競争に飛び込んでも、日本人であるアドバンテージがもうしばらくは使えるかもしれない。
僕がもし今若くて売れない役者だったら、まずは英語を学び、アクシションを身に着ける。
サッカーやバスケットボールでは、ポジション取りがとても大事だ。得点に結びつくポジションが空いたところにさっと走り込んでポジションを取る。そこにパスが入り即座に点を奪う。どのポジションが空くか見極め、躊躇なくそのポジションを埋めることができるかが優れた選手かどうかの分かれ道だ。
このように、空いたポジションを埋めるという考え方をすると生き残り戦略が見えてくる。
練習問題としてベッキーの身になって考えてみよう。もし自分がベッキーだったら、どのようにして復活を図るか。
今回ベッキーが干された理由は不倫発覚とその後のウソに世間が怒ったからだ。復活するためには世間の許しを得なければならない。
だがいったい、世間とは何か。
＜世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、厳しく、怖いもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか」
という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。
（それは世間が、ゆるさない）
（世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう？）
（そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ）
（世間じゃない、あなたでしょう？）
（いまに世間から葬むられる)
(世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう）＞（太宰治『人間失格』）
ベッキーを許さず、ひどいめにあわせ、葬った「世間＝あなた」は誰か。
不倫に怒りを覚え、ベッキー叩きの原動力となったのはいわゆる主婦層であるという説がある。この場合、「世間＝あなた＝主婦層」ということになり、ベッキーが復活するためには主婦層の許しを得なければならない。
主婦層に再度受け入れられるためにどうするか。
プラン１.仏門に入る
道ならぬ恋に身をこがし、世間すべてを敵に回したのち仏の教えに救いを求める。
ポジション取り理論で言えば、瀬戸内寂聴の後を狙う、ポスト瀬戸内寂聴戦略だ。
『週刊女性』『女性自身』に人生相談のコーナーを持ったりして悩める女性の相談役的立ち位置を確保する。今回の件を超越するという意味で、瀬戸内ゲス超と改名してもよいだろう。
プラン２.ロハスに走る
道ならぬ恋に疲れ、自然に癒しを求める。海の近くに居をかまえ、ヨガとロハスで身を清め、ナチュラリストを名乗る。ポスト高樹沙耶戦略である。
この「大自然と一体になる」「自然のヴァイブスを全身で感じる」路線はちょっと間違えると窪塚洋介化する危険性が潜んでいる。I can fly。
行くとこまで行って卍LINE化するとそれはそれでかっこよいかもしれない。
プラン３.剣道を習う
道ならぬ恋から目覚め、剣の道で己の心身を鍛え直す。キャッチフレーズは、「一本の竹刀が、わたしを救った。」
剣道に打ち込んで凛々しい女性となった暁には、警視庁の非行少年更生キャンペーンのポスターに出たりすることが出来る。剣道と青春というイメージを推し進めていけば将来的には県知事になれる。ポスト森田健作戦略だ。
なお、間違っても竹刀を持ってセンテンススプリング編集部に殴り込みをかけてはいけない。その路線を狙うのならまずはベッキー軍団を作ってからだ。
こんなふうにポジション取り理論を活用すると自分の生き残り戦略が見えてくる。関係者の方々、ご一考ください。
ぼくはぼくで、ポスト・ケーシー高峰戦略でこれから生き残るつもりだ。あるのか、需要。
