週刊ポスト<「塩分を減らせば血圧下がる」はやっぱり間違いだった>という記事を題材に、自分の専門外の領域の情報の真偽を確かめる方法について考えている。
次から次へと本当ともウソともわからない情報が飛び交う中、すべての分野の情報をじっくりと検討するというのは難しい。一番望ましいのは情報の大もとまでたどっていって、専門知識を身に着けつつ検討することだが、特に専門外の領域では限界がある。そんなとき、エンジェル投資家だったらどうするか。
エンジェル投資家兼京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授(長い肩書だ)の瀧本哲史氏の方法はこうだ。
<「裏をとる」のではなく「逆をとる」>(瀧本哲史『武器としての決断思考』星海社新書 2011年 p.157-161、『戦略がすべて』新潮新書 2015年 p.147-149)
「逆をとる」とはなにか。
<(略)自分の仮説と逆の考え方や事実を探し、それがどの程度信頼できるかという、反証的な視点で確認していく>(『戦略がすべて』p.148)
瀧本氏によれば、「裏をとる」とは情報ソースの大もとまでたどっていって、その論拠の確からしさを検討することだが、その場合は<自分にとって都合の良い事実を優先的に認知して間違った判断をしてしまいかねない>(上掲書同頁)
たとえば『減塩しても血圧下がらない』という仮説を検証するときに、『減塩しても血圧下がらない』と考えている人たちに話を聞きに行ったり、『減塩しても血圧下がらない』という論文ばかり読んでも同じ話しか出てこない。
瀧本流に情報を読むのであれば、『減塩しても血圧下がらない』の逆、『減塩したら血圧下がる』という考え方について調べ、その信頼度を考えることになる。
『減塩したら血圧下がる』という考え方を訴えているグループは数多い、というか9割以上の医療者がそう考えている。
高血圧の専門家が集う日本高血圧学会では「高血圧治療ガイドライン」で減塩の重要性を訴えている(ガイドライン2014 第4章)。
http://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf
アメリカの心臓病の専門家集団アメリカン・ハート・アソシエーションでも、「#BreakUpWithSalt」というキャンペーンをやって、減塩を訴えている。
WHO世界保健機構でも「食塩を1日あたり5g以下にすることで血圧を下げることができる」としている。
『減塩しても血圧下がらない』の逆=『減塩したら血圧下がる』をとった場合、世界中の複数の専門家がその説=『減塩したら血圧下がる』を推奨していることがわかる。
エンジェル投資家流に読んでも、週刊ポストの記事<「塩分を減らせば血圧下がる」はやっぱり間違いだった>は鵜呑みにしないほうがよさそうだということになるのである。
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