沖縄病、というそうだ。
沖縄を訪れた者はみな、心の一部を沖縄に置いてきてしまう。
そのなかには沖縄に恋し焦がれて、とうとう沖縄に移り住む者もいる。
亜熱帯の、濃い緑の中、白い一本の道がまっすぐに続く。
空には巨大な入道雲。
借りた自転車に乗って、誰も来ない道をゆっくりとゆく。
カラカラと車輪の音、時々風。それ以外は何の音もしない。
無音。
ただひたすらに自転車をこぐ。
むこうから、赤銅色に日焼けした小柄な老人が黒い水牛を連れてのんびりと歩いてくる。
言葉もなく通り過ぎる。
たぶんこの先、二度と会うこともない。
浜辺に着き、しばし佇む。
砂浜、遠浅の海、太陽。
いったい、これ以上何が人間に必要だというのだろう。
あと必要なのは、ビールかな?
遠くで雷鳴が聞こえる。
南の島に激しく短い雨が降る。
やがて雨も上がり、夕方の強い日差しが樹々に力を与える。
天空には虹がかかり、ぼくは船に乗るため港を目指す。
(hirokatz.tdiary 2003年7月30日を加筆再掲)
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