コトーを読みながら2-離島の医療を継続させる工夫とは

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マンガ『Dr.コトー診療所』を読みながら、かつて訪れた沖縄のとある島の診療所のことを思い出している。

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人口数百人、塩作りで有名なその島にうかがったのは今から10年前。一人の心熱きドクターがその島の医療を支えていたー

と書くと、今にもヒューマンドラマが始められそうだが、熱意だけではモノゴトは続かない。しかし地域医療というのは続かなきゃダメなわけで、離島の医療を支えるドクターやナースの熱意をさらに支える工夫があった。
ぼく自身が島を訪れたのは2010年ころの話なので、現在の状況と異なる点等あればぜひご指摘くださいませ。


1.「片道切符」ではない離島の医者

医師不足地域では時に、相当な高額で医者募集をしていたりする。しかしそうした募集がすぐ埋まるかというとそうでもない。理由はただ一つ、「半永久的な契約だから」。

どんなに高額な給与が自治体から支払われるとしても、縁もゆかりもない土地で、半永久的に働くと決断するのは大変だ。

しかし1年とか数年であれば、医者不足の地域で働いてもよいと思う医者はいる。

 

沖縄の離島や、それなりにうまく医者が赴任してくる地域というのは、大学病院など大きな病院から1~数年ごとに医者が派遣されてくるのだ。

1~数年くらいだった離島やいわゆる僻地で働いてもいい、という医者はいる。

 

臨床研修制度という医者のオンザジョブトレーニングに関する仕組みが変わる前は、ほとんど医学生は卒業して医者になると大学の「医局」という非公式集団ーまあギルドみたいなもんであるーに属した。医局の医者養成プログラムの中には医者不足地域への派遣期間もあったので、それなりにうまく回っていたが今は事情が変わった(別の機会に後述)。

 

ぼくが訪れた離島では、県立病院から1~数年ごとに医者が派遣されてきて、交替で勤務していた。たぶん沖縄の多くの島でも同様だと思う。
離島で働くと決まっても数年で次の代わりの医者が来て交代、とわかっていれば、気負わずに働けるのだ。
その島が気に入れば赴任期間を延長してもいいわけだし。

2.離島の医者を支える代診

離島やいわゆる僻地で働くことのキツさの一つは、「24時間・365日・期間無期限」なことだ。

勉強会・学会に参加したり、休暇をとったりするために島の外に出かけたくても出かけられないーそんな状況を減らすためにあるのが「代診」の制度だ。
沖縄県へき地医療支援機構ゆいまーるプロジェクトでは、離島に勤務している医師がリフレッシュや学会参加で島から出たいときに、代わりの医師を派遣してくれる。

ゆいまーるプロジェクトとは ゆいまーるプロジェクト

また、そのほかにも県立病院に代診を頼むことができると思われる。

3.専門医の定期派遣

N先生に島を案内していただいているときにこんな会話をした。

「一人で全ての島民のすべての病気を診るっていうのはたいへんですよね。特殊な難病とか、専門的な病気とか困りませんか?」

「整形外科の先生とかが定期的に来てくれますから。半年に一度くらいかな」

「半年に一度だとたまにしか診てもらえませんよね」

「でもね、半年に一度でも島の人を診てもらっていると、いざというときに電話で相談しやすいんですよ。前に診てもらっただれだれさんがこんな状態なんだけど、どうしたらいいでしょうとか。専門医のほうも、ああ前に診たあの人ね、ってなる」

ふだんの診療は離島の医者が行い、ポイントポイントで定期訪問の専門医が診る。そしていざというときは電話で相談する、というシステムになっているのだ。
なるほど。


(もうちょい続く)

 

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