引く医者、引かぬ医者part.7~「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」の話。

引く医者引かぬ医者の話。

医療業界のスラングで「引く医者」と言えば、受け持ち患者さんがなぜだか次から次へと重症化していく医者のことを言う。
「引く」原因には複数の要因があり、スーパーナチュラルな部分もあるかもしれないが、人智の及ぶ範囲で「引かぬ」医者を目指したいという話をしている。

〈【教訓6】ユーザを共同開発者として扱うのは、コードの高速改良と効率よいデバッグの一番楽ちんな方法。〉
〈あるいはもっとくだけた表現だと、「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」。これをぼくはリーヌスの法則と呼んでいる。〉(エリック・スティーブン・レイモンド『伽藍とバザール』平成11年 光芒社 p.19およびp.24。原題は「The Cathedral and the Bazaar」、リーヌスの法則Linus's Lawは「Given enough eyeballs, all bugs are shallow.」)

ぼくはコードはビタ一文書けないし、「伽藍とバザール」が出たのは20年も前だから、今のソフト開発の主流な思想がどのようなものかも知らない。だが、上記のリーヌスの法則はぼくの診療行為に大きな影響を与えている。

大前提として、ぼくは成人の軽症慢性期の患者さんの外来診療を生業としている。だからああだこうだ言うことは、小児科領域や救急医療、入院医療でも成り立つとは限らない。

その前提のもと話を続ける。
リーヌス(リーナスとも)の法則を医療に応用するというのは、有り体に言えば「チーム医療」、もっと言えば「患者さん自身をチームの主力としたチーム医療」ということになるだろうか。
「チーム医療が大事」という話は多くの場合、医者が威張っていてそれではダメ、みたいな生ぬるい話に終始する。生ぬるい話をしたい人はしていればよいが、「チーム医療」は全知全能でない人間が極力ミスや見落としを無くすための仕組みの話である。Yes, To Err is Human.

(続く)

 

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