引く医者、引かぬ医者part6~「様子見ましょう」と言わない、ということ。

引く医者と引かぬ医者の話。

担当した患者さんが片端から重症化したり、アクシデントが多発したりする状態を、医者のスラングで「引く」という。
若い間、十分なバックアップとフィードバックのもとで「引く」のは悪くない。多くの経験、とくにトラブルシューティングの経験が積めるし、それは医者の力になるからだ。
だが、一定の年代になったら、「引かぬ医者」を目指さないと身が持たない。

「引かぬ医者」になるために、ぼくが自身に課しているのは、「様子見ましょう」と言う言葉を極力言わないようにすることである。なぜなら、「様子見ましょう」というのは思考停止だからである。

ある薬を患者さんに処方したとする。しばらくして患者さんが「あの薬を飲むとなんとなく調子が悪い」と言ってきたら、安易に「様子見ましょう」と言ってはいけない
何がどう調子悪いのか、その調子の悪さは重要なものなのか、実際にその薬によるものなのか、十二分に検討しなければならない。投与を継続すべきか中止すべきか決定し、継続すべきあるいは中止すべきであればその根拠は何か明確にして患者さんに方針と根拠を提示しなければならない。検討と判断と方針提示をおろそかにして安易に「様子見ましょう」を乱発すれば、いつの日か、「引く」。そう遠くない未来に。

ぼくも患者さんに「様子見ましょう」と言うことはもちろんあるが、その回数はおそらく週に数回だと思う。

検討や判断を先送りせず、その場その場、“爆速”で検討し判断し意志決定していくクセをつけていくことが「引かぬ医者」になる必須であると信じるが、本当にそれが正しいかは、しばらく様子見ましょう。

 

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