「柳井正氏の怒り『このままでは日本は滅びる』」が見落としているもの。

ユニクロ柳井正氏の記事が話題だ。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/?n_cid=nbponb_fbbn&fbclid=IwAR2b3Hr0YDXmARsBBCPUUoNc5upsiNQT2l-aKqiIwwSZgk3aFhGtP2N7vHU

危機感はおおいに共有するけれど、対応として「国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする」荒療治、と言っているのはあまりに古い考えで、レーガンサッチャー時代の感覚と思う。誰か経済学者なりがきちんと反論することを望む。

 

頭の整理のために書いてみるが、間違えていたらご教示ください。
「公務員を減らせ」と主張する人の頭の中にある「公務員」像は、おそらく市町村役所の窓口の暇そうで横柄な人、というイメージであろう。
しかし数で多いのは「現業」。現場で働く公務員だ。
現場の自衛官は約22万5000人。警察官は28万6000人くらい。そのほかにも国立病院や国立大学(ただし今は独法化)の医者看護師教官なども公務員(やみなし公務員)で、「公務員を半減せよ!」という世論になったら、目標達成のためには「現業」の人を半減するのがてっとり早い。
だから、地方の「働かない役所の人」(それも今となってはフィクショナルな存在だ)を半減しろ、というつもりで「公務員半減」を主張しても、結果は自衛官や警官や国立病院の医者や看護師が半減される(この部分、昔Tくんに教わった)。
で、「現業」の現場は、半減した人員では回らないから、サービスを半減するか、足りないマンパワーを民間の派遣業に委託する。区役所とかの窓口はとっくの昔にそうなっていて、クレーマーな人が「小役人を怒鳴りつけてやった」と得意顔だったりするけど、派遣社員の人をいじめてるだけだったりする。
また、以前からある「役所は人件費が高すぎる」という世論に従い、中央官庁でも様々なところを外注しているはずで、調査や政策立案部分にコンサルタントを入れたり、法案作成の部分などに外部の弁護士事務所を入れたりしている。
外注した予算のところは「人件費」ではなく「業務委託費」などで計上されるので、「改革の結果、官庁の人件費割合を下げられました!」と言えるわけだ。
で、長年その体制でいると、官庁内部にノウハウが蓄積しないから、内部の調査能力や政策立案能力や起草能力が伸び悩む。指導できる人も限られてしまうから、若手が育たない。若手が育たなければ、中堅はいつまでも下っ端仕事に忙殺される。魅力的な職場でなくなれば、有能な人材は集めにくくなる。

 

上記のような事態が、ここ20〜30年進行してるのに、今時「公務員と国の歳出を半減することが日本を救う!」なんて言われると、はっきり言ってどこに目をつけてるのかなあとがっかりするわけである。読書家で知られる柳井氏だが、記事の公開部分だけを読む限りは、先入観が強く、読書により自分の考えを見直すタイプではなく、読書により自分の考えを強化していく(自説にあうところだけを取り入れる)タイプではないかと危惧される。

 

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