引く医者、引かぬ医者part2

“引く”医者と“引かぬ”医者がいる、という話を先日書いた。

大前提として、医者の職業人生の初期には“引く”医者であることが望ましいとぼく自身は思っている。
医者という職業もまた、経験が持つ意味は大きい。
若い時期に“引く”医者であることは、膨大な経験をその医者にもたらす。
何か重大な事態に出会ったときに「あーあの時と同じだ。あの時はこうやって対処した」と落ちついて対応できるのは、若い時に“引き”まくって経験を積んだ医者に他ならない。
だが、若い時期に“引く”場合、理想を言えば適切な指導とバックアップ、そしてフィードバックが不可欠だ。
適切な指導とバックアップ無しでは担当患者さんをいたずらに危険にさらすばかりだし、フィードバック無しでは自分のした診断治療が正しかったのかが分からず、成長しないからだ。
暗闇でゴルフの打ちっ放しをやっても上達しない。自分のスイングのあとに、球がどのような弾道を描きどっちの方向にどれくらい飛んだかフィードバックされるからこそスイングを修正することができて上達するのである。ゴルフしたことないけど。

若い時期には“引く”医者であるほうがよいと思うが、一定の年代になっても“引き”続ける場合は、何かしらの改善点があるはずである。
自分の技量やキャパシティを越える量の仕事が降りかかってきているかもしれないし、初期に気づくべき変化を見落としていたかもしれない。どこかで判断ミスがあったり、何か無理が生じているのかもしれない。
「無理はいけません。無理とは、天地自然の理が無いということ。天地自然の理が無いことは、うまくいくはずがない」と、昔K先輩に言われたのを、ぼくは肝に銘じている。

時には自分の技量やキャパシティを越えた仕事をこなさなければならないこともあるし、無理もしなければならない。だが、それが永続するのは避けなければならない。患者さんに迷惑がかかるからだ。
「First, do no harm」は常に真実である*。
(続く)
*常に真実であると言っておいて何ですが、ググってみるとこの言葉自体はヒポクラテスの言葉ではないみたいですね。
https://drmagician.exblog.jp/22144349/
ここの部分、あとで書き直しが必要かもしれません。
「常に真実」じゃなくなっちゃいますが。

 

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