SHOWROOMとN国と崎陽軒ー余計な一言でムダな敵を作ってはいけない、という話。

言葉というのはおそろしい。
たった一言で人の心をひきつけるかと思えば、敵を自ら作りだしたりもする。

 

昨日見つけたうまい一言をご報告したい。敵を作らず広く味方を増やす言い回しだ。
<ビジネスパートナーは「東京の東側の匂い」がする人がいい>(前田裕二『人生の勝算』幻冬舎 2017年 p.183-184)
これはSHOWROOM株式会社社長の前田氏が、ビジネスを立ち上げるときにどんな人を片腕としたいか問われたときの答えだ。
前田氏自身が葛飾区出身で、<泥臭い働き方を好むタイプ>だったので、同じような価値観の人と働きたいと思ったのだという。
「泥臭い働き方ができる人」という言い方では読み流される。「東東京の人」ではなく「東京の東側の匂いのする人」という言い方をすることで東京都の東の茨城・千葉の読者も取り込める。
そして、「東京の西側の匂いがする人はダメ」という表現ではムダに敵を作る。

「東京の東側の匂いのする人」という言い方なら、ムダに敵を作らない絶妙な言い回しだと思う。

 

生きていく上で非常に重要なスキルの一つに、『ムダに敵を作らない』ということがある。
味方を助けるために命を賭ける人は少ないが、敵を引きずり落とすために自らの命を捨ててもいいという人は少なくない。
健やかに生きていくためには、『ムダに敵を作らない』というのは大事である。
田中角栄も、「頂きを高くするためには裾野を広くしろ」と説いた。熱烈な味方を作るためには、強い味方というほどではなくとも少なくとも敵ではないという中間層を分厚くする必要があるという意味だと思う。
先述の前田氏の一言は、味方を作りつつムダに敵を作らない考えつくされたフレーズであった。


一方で、たった一言で永遠の敵を作ってしまう人もいる。
先日、「NHKをぶっ壊す」と言っている人が、マツコ・デラックスの発言に抗議するといって度を越した嫌がらせをして、マツコ・デラックスの番組のスポンサーの一つである「崎陽軒」のシューマイ不買運動を呼び掛けた。
この「崎陽軒のシューマイを買うな!」の一言で、彼は一気に世間から愛想をつかされ、崎陽軒のシューマイをこよなく愛する神奈川県民から敵認定された。
崎陽軒のシューマイをけなす者はもちろん神奈川県民の永遠の敵である。


と、そんなことを書いたら神奈川出身の美しき友人や敬愛する先輩から立て続けに連絡が来た。
崎陽軒は、シューマイではなくシウマイです!」
崎陽軒のシウマイは横浜のものであり、横浜を神奈川県の代表とするごとき論は我らが相模原への冒涜だ!」
このように、余計な一言はムダに敵を作ってしまうのである。
まことに言葉というものはおそろしい。

 

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