色川武大『9勝6敗』戦略考(その2)

色川武大氏の『人生、9勝6敗戦略』について考えている。

 

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まず大前提として、人生トータルで見たときに連戦連勝、勝ち星だけという人はほぼ皆無である。
現代の職位の最高位の一つ、アメリカ合衆国大統領に就いているトランプ氏だってキャリア中にカジノやホテルを破産させているし、2回離婚している。
今度一万円札になる渋沢栄一氏だって、倒幕の志士としてキャリアをスタートしたかと思えば徳川家の家臣入りし、そしたら幕府がなくなって今度は明治政府官僚となって、さらには民間の経済人となった。勝ち星負け星といっていいかはわからないが、まっすぐなレールを最高速度で走ったわけではないといってもいいだろう。
今をときめくユニクロだって野菜売ろうとして撤退したし、孫さんだって投資で負け星はついている。
「失敗なんてない。あるのは【行き止まり】の発見だ」(*)、という名言に従い、失敗という言葉は出来るだけ使わないが、成功者でさえ負け星がついていない者はほぼいないという例を列挙した。負け星無し、どこまで行っても連戦連勝なんてのは播磨灘ぐらいなものだ。

 

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この人が播磨灘。

 

話は『9勝6敗戦略』に戻る。
仮にその『9勝6敗戦略』が実現可能だとして、どのようにしたら実践できるだろうか。
実践法の一つとして、まずは『9勝6敗できるフィールドで戦う』を挙げたい。

 

人間には向き不向き得手不得手がある。
人格形成期やキャリア形成前半戦では手当たりしだいに何でもやってみて、自分の向き不向き得手不得手を手探りで探すしかないだろう。
しかしどこかの段階で、自分が勝てる、少なくとも連敗しないフィールドを主戦場として設定すべきだ。

 

連戦連勝できるフィールドで戦えばいいじゃないか、と思うかもしれないがそうはいかない。
大相撲でも連戦連勝できる力士は上のフィールドへ押し上げられるし、プロサッカーだってそうだ。
企業だって連戦連勝し続けると独占禁止法などで適度な競争を強いられる。
何より時の流れという残酷なものがあるので、連戦連勝し続ける者はほぼいない。

 

であれば、負け星が付くことは世の常として受け入れ、運否天賦にならず安定して9勝6敗を狙える、自分の得意なフィールドを選ぶほうが勝負しやすい。

(続く)

 (*)<マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長も、このことを知っていた。「医学でも科学でも、何かの道を歩いていってそれが袋小路だとわかるだけで、ものすごい貢献だ。その道を二度と行かずにすむじゃないか」と彼は言う。「マスコミはこれを失敗と呼ぶ。だから政府では誰もイノベーションを起こそうとしたり、リスクをとろうとしなくなるのだ」>(スティーヴン・レヴィット他『0ベース思考』ダイヤモンド社p.248-249 それは「失敗」ではなく、「袋小路の発見」である)

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