色川武大『9勝6敗』戦略考(その1)

〈九勝六敗を狙え〉。

友人Tに教えてもらった色川武大『うらおもて人生録』にそんな話を見つけた。
色川武大といえば『麻雀放浪記』(阿佐田哲也名義)の作者だ。そんな“ばくち打ち”が連戦連勝ではなく九勝六敗を狙えというからには理由がある。

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自伝的小説『麻雀放浪記』の"坊や哲”ですね。『麻雀放浪記』の漫画化を企画した人の選球眼はすごい。



色川武大氏によれば、〈運は結局ゼロ〉、〈(略)好運のときがある。不運のときがある。運には定量があるわけじゃないが、プラスとマイナスがかみ合って、一生を通じてみると原点と考えたほうがいい。〉(上掲書p.122)。

 

一生を通して運はトータル・ゼロ。だが8勝7敗で終わるのと7勝8敗で終わるのでは雲泥の差、ましてや勝負師たらんとすれば9勝6敗を狙いにいけ、という話のようだ。

 

色川武大氏の話を咀嚼し、「運」という検証困難なもの以外のファクターでこの「9勝6敗」論を考えてみると、下記のような認識に至る。

 

【認識①】人間社会は、価値観や実力が「似た者同士」で小集団に分かれる。そうした「似た者同士」の無数の小集団が寄り集まって社会を形成し、個々の勝ち星負け星のやりとり、利害関係はもっぱらその小集団内で行われる。

 【認識②】小集団内において、恒常性維持のために勝ち星負け星はだいたいプラスマイナスゼロになるような圧力が働く。勝ち続けるものは負けるように小集団内で意識的無意識的な調整が働き、勝ち続ける者は小集団から弾き飛ばされたり自ら立ち去ったりして別の小集団にメンバー入りする。負け続ける者もしかり。かくして小集団内での構成員の勝ち星負け星はだいたい均衡する。

 【認識③】勝ち星負け星は一つ一つ大きくも小さくもなる。勝っても小さい勝ちのこともあれば、一つの負けで致命傷になることもある。また、勝ち星負け星の大きさ小ささの評価は、評価者によって異なる。

 

詳細は後述するが、上記に基づく「9勝6敗」戦略の実践法としては

【戦略①】9勝6敗できるフィールドで戦う。
【戦略②】平穏なる生存のために、複数の小集団に所属しておく。
【戦略③】大きな勝ち星を拾いに行くために、小さな勝ち星は譲っておく。逆にあえて小さな負け星を拾っておく。

ということだろうか。

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星のやり取りといえばやはりこちら。



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