2016-01-01から1年間の記事一覧
日本の医療費総額は、2014年度に40兆円を突破した。原因は高齢化と医療技術の進歩だ。こうしたニュースが出ると必ず、「終末期の患者に過剰な治療をしているせいだ。医療現場はそうした過剰医療をやめるべき」という話がでる。実際にはもっとえげつなく、「…
<やがて私は、陰鬱だった一日の出来事と明日も悲しい思いをするだろうという見通しに打ちひしがれて、何の気なしに、マドレーヌのひと切れを柔らかくするために浸しておいた紅茶を一杯スプーンにすくって口に運んだ。とまさに、お菓子のかけらのまじったひ…
ノーベル生理学医学賞受賞が決まった大隅良典栄誉教授が、記者会見で「社会全体で基礎研究を支える仕組みを」とたびたび訴えておられる。 ノーベル賞・大隅教授「年間100万円あれば、やりたいことを進められる研究者がたくさんいる」 (日刊工業新聞電子版)…
東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。素晴らしいことだ。 ノーベル賞受賞者ときくと常人には想像もつかない思考と行動をしているかと思うがそうではない。 ノーベル賞を受賞した人々が必ずやっていることは、実はある意味で大…
今月、よみうりカルチャー北千住および京葉で、『認知症との上手な付き合い方~家族の心得』『家族が認知症と診断されたら』という公開講座を開催いたします! ○10月16日(日)13時からよみうりカルチャー北千住で『認知症との上手な付き合い方~家族の心得…
雑誌『女性セブン』をパラパラとめくってきたら<人生最後の日、あなたはどう向き合いますか?>という文字が飛び込んできた(10月13日号 p.142-143)。ホスピス医・小澤竹俊氏の連載の第2回だという。 高齢化を反映してか最近「終活」ブームで、あちこちで…
今回の話には2つ弱点がある。 一つは引用文献にバイアス、偏りがあるということ。もう一つはぼく自身の実体験による部分が少なく、「机上の空論」「時代遅れの考え」と言われてもやむを得ないというところである。それでもなお何か得るところがあれば嬉しい…
本日発売の女性セブンの記事、『医者の力を100%引き出す<賢>診察室会話術』でコメントを載せていただきました! www.news-postseven.comweb版『医師にとって一番困るのは「症状をはっきり話せない患者」』は抜粋なので、ぜひ本誌をお読みください!81ペー…
「あーあ、だから言ったのに」 もしもぼくがイチローだったらたぶんそう言うだろう。 先日NHKで放映された『健康格差』という番組を観ながらそう思った。 もっとも、イチローと言ってもイチロー・スズキではなく、イチロー・カワチのほうだが。 イチロー・カ…
「いいよな、日本人は」バリ島のビーチで彼は言った。 「葬式のお金がかかるからね、バリ人は」 何年も前の夏休み。数週間後にテロで爆破されることになるシーフードレストランの近くのビーチでうだうだしているとわらわらと物売りがよってきた。ぼくはコー…
元アナウンサーの某氏が「人工透析患者は自業自得。全額自費負担にさせよ!無理だというのなら云々」とブログにアップして炎上中だという。云々の部分はおぞましいから書かないが、品性の無いことだと思う。 lite-ra.com 生活習慣が病気のリスクを増大させる…
「日本の延命治療が濃厚なのは宗教がないから」という言説についてずっと疑問を抱いている。こうした一見分かりやすい言説というのは有害だ。そこには思考停止のワナが潜んでいる。 狭い意味での宗教の定義は、教義、教祖、教団を必要とするが、明文化された…
週刊東洋経済9月24日号『納得のいく死に方』特集を読んだ。 延命治療や終末医療の議論になるとよく、「日本には宗教がないから、無意味に延命する」的な意見が出る。それに引き続いてその場にいるみんながそうだそうだとうなづくシーンを何度となく経験する…
先日通勤中に、食パンをかじりながら急ぎ足で登校する女子高生を見かけた。 新学期も始まったことだし、これから「遅刻、遅刻〜!」と慌てて街角を曲がった途端クールでぶっきらぼうな男子高校生とぶつかってケンカになり、あとになってそれが転校生だと分か…
いよいよ『こち亀』も最終回だとのことで、勝手に最終回を予想してみることにする。 以下妄想。 (派出所) 両津:「いよいよこの漫画も最終回だな!」 中川:「なんといっても40年ですからね」 麗子:「両ちゃん、ほんとにお疲れ様!」 両津:「さすがのわ…
いつも右と左で色の違う靴をはいて旅するカバン屋の絵本を子供たちに読んでやっていたら、ふとある人のことを思い出した。20年ほど前、パリのユースホステルで出会った60歳くらいのカナダ人の、白髪白ひげのおじさんのことだ。 絵本のカバン屋は暖かい季…
「火傷したらガスやフライパンであたためるのが新常識☆あたためると体の自然治癒力がアップして治る」というクレイジーインチキ情報が世に出回って数日立つ。 大間違いです。とにかく火傷は流水で冷やしましょう。 なんでもかんでも自然が一番、人工物はダメ…
ここ数日、「火傷は冷やしちゃダメ。むしろあたためるのが新常識」なるエセ医学情報がネット上で流通している。批判のためのURL引用をすることで拡散に直接手を貸すのもイヤなので、各自ご検索ください。 発端の自称自然派ママのブログでは、「火傷をしたら…
子供のころは今より世の中がもうちょっとゆっくりして、いろいろとヒマつぶしをした。ネットもスマホもないので夏休みには少年ジャンプを何度も読み返したりしてヒマをつぶした。こち亀の両さんで大笑いしたり、ファイティングコンピューターの異名を持つロ…
<棒きれ、石ころ、道はずれ取り残された切り株ちょっとした孤独ガラスのかけら、人生と太陽 夜と死、ロープ、釣り針> ボサノバを作った男、ジョアン・ジルベルトの『三月の水』という歌はこんなふうに始まる(国安真奈訳。ユニバーサルミュージック『ジョ…
「今はネットがあるから知識を覚えるつめこみ型の勉強は時代遅れ。情報は必要ならその場で検索すればよいのだから」的なことはよく言われる。けれど、ネット検索で上位に出てきたからといってその情報が正しいかどうかはわからない。 病気や治療についてのネ…
「上に政策あれば下に対策あり」 中国語で言うと「上有政策 下有対策」、発音としては「shàngyǒuzhèngcè xiàyǒuduìcè」となる。もちろんぼくは発音できませんが。 政府がなにか政策を決めても国民はそれに対して必ず対策を打つ、という意味で、ぼくの好きな…
小学生のある夏、ぼくは目に涙を浮かべて読書感想文を書いていた。 本に感動したからではない。書き始めたのが9月1日の朝だったからだ。 始業式開始まで残り1時間余り。泣きべそを書きながらでもやるしかないではないか。 どうしてあんなに締め切りギリギリ…
夜。 窓を開けて風を呼び込み、 りりりと鳴く虫の音を聞く。 ゆるりと足もとを涼しさが流れていき、 こっそりと秋が始まろうとする。 _ そうはさせじと 明日も夏は頑張るのだが、 いかんせん時の流れは残酷で、 強い日差しをお払い箱にする。 _ 子供らは 宿…
大丈夫か、週刊現代。下手したら大きな被害が出る。 迷走を続ける週刊現代の『医者の薬飲むな』キャンペーンだが、そろそろヤバいレベルに入ってしまったようだ。 9月3日号では、喘息の治療でステロイドを使うなという記事を出している(p.186-188)。 その…
ウサイン・ボルトに続き、ケンブリッジ飛鳥がゴールした。 リオ五輪男子400mリレー、まさかの銀メダルだ。 満面の笑みの山県、飯塚、桐生、ケンブリッジの4人を見て頭に浮かんだのは、1998年フランスでのワールドカップでのフランス代表チームだ。 この年の…
世界最速の男、ウサイン・ボルト。 先行するアメリカのジャスティン・ガトリンがそのまま逃げ切るかと思ったのもつかの間、笑うしかないほどの速さでボルトが追い抜きゴールした。9秒81、まさに人類最速。 ボルトはゴールするとそれほどスピードを落とさない…
13日深夜のネットニュースでは、とうとうSMAPが解散するという。同年代であることとリミックスアルバム「SMAP BOO」は何度も聞いたなーという以外はそれほど思い入れもないのだが、このニュースで頭をよぎったのは以前見聞きした「解散するグループやバンド…
<遠い国の客には笑われるけど 押しあわなけりゃ街は電車にも乗れない まるで人の全てが敵というように 肩を張り肘を張り押しのけあってゆく けれど年に二回 8月と1月 ひとははにかんで道をゆずる ふるさとからの帰り つかの間ひとを信じたら もう半年頑張れ…
風さえもやんでもわんとした真夏の大気の中をのたのたと歩いていると、八百屋の店先で店主が文庫本を手にじっと腰かけているのが目に入った。文庫本の、はじめから3分の1程度のページを開いてただ見つめているようにも見える。 昼過ぎのことで買い物客はひ…