朝の通勤電車。
若いお母さんが子どもを抱っこしてたっている。
席はあいているが、吊り革につかまるのが楽しくしかたない我が子のために一生懸命抱っこしているのだ。
あるある。ぼくは心の中で共感した。子どもってなんであんなに吊り革につかまりたがるんでしょうかね。
子どもにとって世界は常に刺激で満ちていて、なんでもかんでも体験するのが新鮮なのだ。
いつの間にか子どものころのその感受性を失ってしまって、大人になったぼくたちは「いつもと変わらない毎日」というものにいささかうんざりして日々を過ごしている。
でもね、とぼくは見知らぬ子どもに心の中で語りかけた。大人になるといいこともたくさんあるんだぜ。
どこに行こうとなにをしようと自由だし、仕事とかでだれかの役に立つことだってできる。
ほかにもまだまだ大人になると毎日まいにちいいことが待っているよ、とぼくはその子に心の中で話し続けた。
なにしろさ、大人になったら、何十年も、通勤電車の吊り革につかまりたい放題だぜ。