ファミマ「子ども食堂」批判に思う。

ファミリーマートが「子ども食堂」を行うとのこと。それに対する疑問点・懸念点がweb記事になっていたりする。

news.yahoo.co.jp

誰かを批判したいわけではない。これまで実直に「子ども食堂」運営をされてきた熱意に敬意を表したいし、ファミマ「子ども食堂」事業に限らず世の中なにごとも完璧ということはないので疑問に感じる点を整理して世に問うてくださるのはありがたい。

ただある本の一節を思い出したので引用しておきたい。

 

フローレンスの駒崎弘樹氏が病児保育事業を始めて、それを厚労省に「パクられた」ときに憤慨して、介護業界のフロンティアの人に相談したときの話。好きな話なんで長くなるが以下引用。

 

<「あなたは本当にケツの青い若造ね。その程度のことで何をグダグタグタグタ言っているのよ。そんなことは当たり前のことなのよ」
「当たり前って、どういうことですか」
「よいこと、介護保険制度ってあるでしょ。あそこで使われているケアマネジメントのプロセスであるとか、コーディネーターの仕組みとか、そういった全体の仕組みはね、やわらぎが一番最初に始めたことを国が視察に来て、介護保険をつくるときにパクっていって、制度設計したわけよ。福祉政策なんて、そんなもんなのよ。いつだって志ある市民たちがリスクをかけて実例をつくるのよ。それが成功事例になったら国や自治体がそれを政策化して、世の中に広げていくって寸法よ」
「そ、そういうもんですか」
「そうよ。むしろ国にパクられて一人前、くらいのもんじゃないの」
「で、でも、ビジネスの世界だったら、著作権とかビジネスモデル特許とかあって、先行者の利益が守られるわけですよ。でないと、創造しようとする人間が苦い思いをして、真似した人がおいしい思いをする。そうなったら、社会全体で創造が行われず、沈滞してしまうじゃないですか」
「ビジネスの世界じゃあ、そうねえ」
「でしょ。僕たちも一緒じゃないですか」
「本当にそうかしら」
「え、違いますかね」
「あなたの目的ってなんなのよ。あんたがしたいことって、何さ?」
「どっかで聞いたセリフだな……。えっと、病児保育問題を解決して、『子育てと仕事の両立可能な社会』を実現することです」
「そうするとさ、病児保育問題を解決するんだったら、国にパクられたほうがいいじゃないか。そのほうが全国で取り組みが始まるんだもの」
「う、言われてみれば」
「あなたいますぐ全国行って病児保育やれるわけ?」
「いや、やれないっす」
「だったら、いくらでもパクらせてあげればいいじゃないの。むしろ神様、役人様、ありがとうございます、って拝まないといけないくらいさ。先行者の利益?あんた利益のためにやってるんじゃないでしょ。社会問題の解決のためにやってるんでしょ。何が利益だ、ケツの穴の小さい男だね」>
駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする』ちくま文庫2011年 p.222-223。原著は2007年発刊)

 

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