「悪い」と「良くなっている」、「良い」と「悪くなっている」は両立する。~『ファクトフルネス』を読む。

<「悪い」と「良くなっている」は両立する>

 

ベストセラー『ファクトフルネス』(ハンス・ロスリング他著。日経BP社 2019年)を読んでいてはっとさせられた一節(p.89)。
なにかが「悪い」という状況と、「良くなっている」という状況は両立する。しかし我々はそれを忘れがちだ、とロスリングは指摘する。
具体的な例としてロスリングは、保育器の中にいる未熟児の赤ちゃんを想像するよう促している(p.90)。

 

保育器の中にいる未熟児の赤ちゃんは、保育器の外に出すには「悪い」。だが、1週間前と比べれば「良くなっている」。
「悪い」からといって悲観することもなければ、「良くなっている」からといって今すぐ保育器から出すのも間違いだ。
「悪い」と「良くなっている」は両立する、ということを認識して、適切に対処しなければならないわけである。

 

「悪い」と「良くなっている」をひっくり返して考えてみる。
「良い」と「悪くなっている」の両立。

 

たとえば、日本経済が(少なくとも体感的には)ここ数十年「悪くなっている」と話をしたときに、「日本は治安が良い」とか「日本の食べ物はおいしい」という反論が飛んでくることがある。だが、「悪くなっている」と「良い」もまた両立する。
「日本は治安が良い」、「日本の食べ物はおいしい」というのは「良い」の話。しつこいが「良い」と「悪くなっている」は両立し得るわけで、これまた冷静かつ適切に対処すべき事象なのである。

 

「悪い」と「良くなっている」は両立する。
「良い」と「悪くなっている」も両立する。
願わくば、日本で「良い」と「良くなっている」も両立できますように。

 

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