名著『1秒でつかむ』に見る、テレビ東京こそ自由主義経済精神の体現者である。

日本でもっとも自由主義経済的なテレビ局とはどこだろうか。
関東ローカルになってしまうが、ぼくはテレビ東京だと思ってる。

 

なぜテレビ東京が最も自由主義経済的か。その理由は、テレビ東京の主要株主が日経新聞だからではない。
たしかにテレビ東京の主要株主が日経新聞で、そのためにテレビ東京では経済ニュースや株式市場の番組も多い。
だがぼくがテレビ東京自由主義経済の精神を体現していると思う理由は別だ。

 

自由主義経済が計画経済より優れている点は何か。
それは各プレイヤーが、各々の欲求と考えによってトライ・アンド・エラーをくりかえすところにある。


未来のことはわからない。みんながてんでんばらばらにいろんなことを同時並行で試すからこそ、そのなかで成功する事例も出てきて、その事例が次の世代の成長の種になるのである。
それに対し、計画経済では中央省庁の頭のよい官僚がすべてを計画し、各プレイヤーは右へならえで同じことをする。誰も大失敗しないが誰も大成功しない、それが計画経済的スタイルである。

 

関東地方の人はご存知の通り、テレビ東京は常に我が道を行く。
他の局がみな同じような内容の番組を放映していようと、構わず独自のマイナー番組を放映する。

 

テレビ東京のディレクター高橋弘樹氏が書いた、抜群に面白くて情報密度の濃い本、『1秒でつかむ』(ダイヤモンド社 2018年)によれば、

テレビ東京というのは本当にバカっぽい組織だと思います。視聴率が悪くても、見たことのない新しい番組なら、翌日上司が「もう1回やる?」と平然と言ってくる謎の会社です。でも、だからこそ、テレビ東京には「スベってもいいから新しいものを作り続けよう」という性癖ともいうべき根強い思想信条が、社員に蔓延しているように思います。>(上掲書 kindle版 第1章。「蔓延」って笑)

テレビ東京のように、「バカっぽく」ても新しいことをやり続けることが自由主義経済の発展をもたらした。

 

<テレ東の予算は、他局様に比べれば誠にスズメの涙ですから、失敗しても、あまり良心の呵責がありません。「視聴率が悪ければ、翌日は会社に行かなければいいか……」くらいにしか思っていない人もいると思います。>(第1章4 バランス崩壊力より。この「バランス崩壊力」の部分は、ベンチャースピリットを持った人は必読だと思う)

トライ・アンド・エラーを繰り返して、失敗してもめげ過ぎないことが自由主義経済の「アニマル・スピリット」である。
自由主義経済の王者アメリカだと、「3回破産して4回目に大富豪」みたいな人がザラにいると聞く。そもそもホテル倒産させて離婚繰り返して大統領になる国だし。

この『1秒でつかむ』という本は内容が濃密でオリジナリティに富んでいるので、買って&読んで損のない本だ。

 

このように、おのが信じるところに従い、独自のトライ・アンド・エラーを繰り返すことこそ自由主義経済の精神だとすれば、テレビ東京こそが自由主義経済精神の体現者だということがわかっていただけるであろう。

 

それにしてもなぜ新元号発表の首相談話のときに「お肉トロトロ!かぬま和牛の贅沢旨辛丼」という番組を放映しようと思ったのだろうか、テレビ東京

 

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