君は「カレーの早川くん」を知っているか~ライフワーク、ライスワーク、ライクワークpart.5

しつこくライフワークの話。

 

唐突だが、「カレーの早川くん」をご存知だろうか。
おそらく知らない方のほうが多いと思う。
アラフォー、アラフィフホイホイなB級グルメ漫画『めしばな刑事タチバナ』(坂戸佐兵衛・作、旅井とり・画 徳間書店)の超脇役である。
カレーの早川くんは、カレーを食べることこそがライフワークの人で、ありとあらゆるカレーを食べ続けているがゆえに“達人”の風格を身につけている。その風格のために、初めて入ったカレー屋ですらインド人店主に常連と勘違いされ「いつもどうも」と目で挨拶されたり、勝手にラッシーをサービスされたりする。
日本中のカレーを味わい尽くすことが早川くんのライフワークなので、毎秋には全国各地の大学祭のカレーを食べ歩くため会社を辞めたりすらする(13巻 p.23-24)。
まさにライフワークのためにライスワークも犠牲にする男なのだ。カレーの早川くんにとって、ライフワークこそが自分の存在理由であり、ライフワークに取り組み続けたからこそ誰も真似できない高みに到達したのである。

 

現実世界でもライフワークに取り組み続けて高みに到達した人というのは数多くいる。
瀧本哲史『戦略がすべて』(新潮社 2015年)の中に、地方議員について書かれたこんな一節がある。
〈幾つかの公共政策に関して学生が草の根のロビー活動を行うという自主ゼミの顧問を私は務めているが、最近その過程で、地方議員の思わぬ面を見ることができた。実は先進的な政策を実現することに対して最も熱心なのは、地方議員なのだ。〉(p.238-239)
〈たとえば、ある防災問題に一貫して取り組んできた地方議員がいる。しかしながら、防災問題は、地方行政だけで対応することはできない。そこで、その議員はもともと政党職員だったことを利用して、国会議員の中に防災問題に関心のある議員のネットワークを作ることに成功した。
結果、防災問題に関して、国会議員に直接陳情するよりも、この地方議員に陳情したほうが効果があるというほど重要な役割を担うようになった。〉(p.240)
防災問題をライフワークとして取り組み続けたゆえに、唯一無二の存在となったわけである。

 

ほかにも、日米関係をライフワークと自ら定め、野党時代から定期的に訪米し米国の政治家やシンクタンクと関係を築き、政権交代した際にそのネットワークを活かした国会議員もいる。
あるいは日露関係や北方領土問題をライフワークとして、(功罪・賛否はあるにせよ)やはり唯一無二の存在となった鈴木宗男氏のような人もいる。
「外交は票にならない」と政治業界では言うそうだ。しかしこうした人たちは、ライスワークとして政治家を見たときには短期的には役に立ちづらそうな防災や外交を「俺がやる」とライフワークとして定めたからこそ、高みに到達したわけである。

 

日々の糧であるライスワークに忙殺されながらも、何かしらライフワークを持つべきではないかと思う所以である。
それはそれとして、今日の昼ごはんはタイカレーにしようかインドカレーにしようか悩むところだ。
(あと一回くらい続く)

 

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