新型コロナウイルスに対する言説を5つに分類・整理して考える。

新型コロナウイルスに関し、さまざまな言説が飛びかっている。頭を整理するために、いくつかに分けて考える必要がある。複雑な事情は単純なものに切り分けて扱え、というのはデカルト以来の鉄則だ。

 

新型コロナウイルスに関して
①一人の個人についての医学的な面
②社会全体の公衆衛生としての面
③社会不安、パニック
④経済活動の阻害要因
⑤国内国外への政治的要素

 

と切り分けて別々に論じる必要がある。もちろん①〜⑤は地続きで相互に連関した重層的なものだ。しかしいっぺんに論じると変数が多すぎる。実験(思考実験も含む)をするときには、変数を一つにしぼり、ほかの条件は統一しなければならない。

 

①についてわかっていることは、
・8割は軽症で済む
・症状を出さずに治っていく人も多数いるはず
・高齢者は重症化リスクあり
・特効薬はまだない
・予防は手洗いなど
である。

 

②について
・感染力はけっこうある
・人が集まる場所で感染拡大しやすい
・感染した人がほかの人にうつさないためには、隔離が有効。せきやくしゃみで広がるので、マスクなどで唾液が飛び散るのをブロックするのはある程度有効

 

③について
・中国で発生したため、中国出身者などに心無い対応が見られた。日本だけでなく、欧州ではアジア人に対し心無い言葉が投げかけられるなど、ゼノフォビア的なものを誘発しかねない
・先週あたりからデマが急速に出回りはじめ、日用品の買い占め転売なども起きている
・唐突に全国の学校休止が決まり、混乱が生じている

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④について
・会合・イベントなどの中止により、消費がめちゃくちゃ冷え込みはじめた
・勤務者がコロナウイルス感染していることがわかって営業停止となったりする工場や事業所が出て、生産も落ち込みはじめた
・学校休止により出勤できない子育て世帯もいるはずで、そのぶんも生産が落ち込む
・先行き不安から株式市場も悲観的に反応
・2月3月の生産・消費の落ち込みが売り上げや給与という形で数字として顕在化するのは4月以降。その結果を受けてその後の消費も冷え込む
・少なくない中小企業が「手仕舞い」する可能性あり

 

⑤について
・政権がどう対応するか、その対応がどう評価されるかを予想しながら、政治分野のプレイヤーはポジションを決めていく必要がある。
・もし政権の対応が高評価を受けるとすれば、政権寄りのポジションを取ったほうが新型コロナ禍が収まってから有利
・もし政権の対応が低評価を受けるならば、早めに批判的なポジションを取ったほうが有利
・政治がらみの発言ではないが、今回の新型コロナ禍のなか、バランスのとれた良質の発信をしている政令指定都市の首長は、高い評価を得ている。信頼性を増すことは当然ながら長い政治キャリアの中でプラスに働く
・「悪者探し」や「陰謀論」に乗った政治的発言は、短期には耳目を引くが長期にはマイナスと思われる
・国際政治では、新型コロナ禍をどう乗り切るか、オリンピックをどうするかで我が国の国際的ポジションが変わってくる。
・③のアジアフォビアの顕在化と④の日中両国の経済活動停滞が長引けば、欧州や米国などでのアジアのプレゼンスが変わってくるかもしれない。以前からくすぶるグローバリズムへの疑問視とあわせ、結果、地域内や人種・文化を共有する者同士のアライアンスが強まり、「新・ブロック経済」みたいな話になるかもしれない。
・「グローバリズムが感染症を米国に引き入れた。シリコンバレーやウォール街のグローバリストたちのせいで、ウイルスは入ってきて、国富は出て行った。俺がメキシコ国境との間に壁を作れと言ったときにバカにした奴らが今はウイルスにおびえている。メイク・アメリカ・グレート・アゲイン、モア・アンド・モア!」とか言ってトランプ氏が吠えるかもしれない

 

①から⑤までは連関してドミノ倒しのように進む。
特にめちゃくちゃ深刻なのは④の経済的側面で、相当に傷が深くなるのではないかと懸念している。今は③と④をいかにうまくコントロールするかが課題かと、個人的には考えている。

 蛇足だが、今やるべきでないのは「悪者探し」と「陰謀論」。やるべきなのはがんばった人への激励。
というわけで勝浦ホテル三日月に敬礼。

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