その場しのぎの仕事のしかたからどう脱却するか。

「何かあったら困るから、とりあえず人を確保しておく。実際に何かあったら、その場にいる人がその場の判断でなんとかする」というのは、非常に日本的な仕事のやり方であるなあということを昨日書いた。


この文脈での日本的、というのは批判的な意味で使っている。
この手法は、ヨノナカやモノゴトがまだ複雑化していない時代の、加えて言えば日本に若くて粒ぞろいの働き手が豊富にあふれていた時代のものだ。
さらに批判的に言えば、マンパワーやコストを極限まで抑えることが是とされた趨勢の中で、「何かあったら困るからとりあえず人手の確保」すら怠ってきたのがこの20年間だったのではないだろうか。
俗説だが、フランスの医療機関がコロナ禍の緊急体制にある程度対応できたのは、もともと医療スタッフが毎年何週間もバカンスを取ることを前提にした人手の確保とシフトの組み方をしていたおかげだという(説がある)。平時の余力って大事ですね。

 

さて、上記のような「日本的な」その場しのぎの仕事のやり方から脱却するにはどうするか。奇策はない。

 

まず第一に、しかるべき立場の者は、常にいくつかの簡単な未来シナリオを用意しておく。
将来の、特に外的環境を予測して行動シナリオを持ち、周知しておく、というだけの話だが、大前提になるのは、「未来予測は当たらない」ということだ。
より正確に言えば、「単一の未来予測は当たらない」ということだろうか。

 

英国『エコノミスト』誌の元記者、マット・リドリーは、〈一九七〇年代になされた予言を検証すると、みな悲観的でしかもそのほとんど全てが間違っていた。〉と書く(英『エコノミスト』編集部 『2050年の世界』文藝春秋 二〇一二年 p.406)。
プロの未来学者たちが出した予言すら間違っていたのだから、正確に単一の未来予測を出すのは、無理なのだ。
未来学者などという肩書きすら、最近では聞かなくなってしまった。

 

本で読んだのか講義で聞いたのかは忘れたが、前世紀にはアメリカRAND研究所などで盛んに未来予測の研究がされたが、最終的な結論はやはり「正確に単一の未来予測を出すのは無理」というものだったという(何に書いてあるかご存知の方、教えてください)。
そのかわりに出てきたのが、複数の未来シナリオを用意し、それぞれのシナリオが現実化したときに、自分たちはどう動くかを前もって検討し決めておく「シナリオ・プランニング」の手法だという。
(続く、はず。未来は予測できないから)

 

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