「そこがいいんじゃない!」~中條医院を引き継いで丸3年になりました。

「そこがいいんじゃない!」
我が心の師の一人、みうらじゅん氏、いやみうらじゅん師の言葉だ。
憧れの人ボブ・ディランに「彼は定職はないのか?」と心配されるほど多彩な仕事をしているみうら氏いやみうら師も、果たしてこれはウケるのだろうかと不安になることがあるという。
そんなときに必ず唱える呪文が、「そこがいいんじゃない!」だ(『「ない仕事」の作り方』文春E-BOOK 第1章)。
 みうら師のやっていることは基本的に、今まで誰も関心を持っていなかったことやものにスポットライトを当てブームにしていく仕事、今まで「ない仕事」なので前例がない。だからうまくいくのか不安になるのだ。
そんな時に、「そこがいいんじゃない!」ととにかく肯定していくのだという。
 「そこがいいんじゃない!」という言葉には不思議な力がある。
ぼくは生業として民間医療機関を運営している。
民間機関である以上、長期的に採算が取れないとツブれてしまうが、一方で医業というのは営利を目的としたものではない。
採算を考えて利益の確保だけを目的とするならばインチキなことをやれば多少は儲かるのかもしれないが、一医者としてそんなことはしたくない。
だが一医者として採算度外視して医療をやれば病院がツブれる。
経営と医療を危ういバランスで成り立たせることは気疲れすることもある。
だが、「そこがいいんじゃない!」
 民間医療機関の運営をしていていつも思うのは、少年ジャンプだ。
ぼくの世代だと『ドラゴンボール』に『北斗の拳』に『男塾』に『スラムダンク』に『シティーハンター』。たくさんの子どもに夢と勇気と美学を与え続けるキラ星のごときそれらの作品は、商業主義や読者アンケートと、作者の芸術性や創作意欲とを、際どいバランスで両立させて世に残った。
売れればよいってものでもなく、芸術性が高いだけでもいけない。営利と芸術の間でギリギリを突く。まさに「そこがいいんじゃない!」。
 2017年にクリニックの運営を引き継いで丸3年が経つ。悩むことも多い。
 だがな、お前なら採算と理想を両立させられるはずだ。骨は拾ってやるから思いっきりやってみろ。お前がどこまで出来るか、大陸で見ててやるよ。それが男ってもんじゃないか。ブロンソンならこう言うね。
 というわけで、冬場のコロナとインフルエンザと風邪のシーズンへの不安もあるが、「そこがいいんじゃない!」。
これからも、病いに悩む多くの人にとって、ゲートキーパーならぬゲートオープナー、医療の大海のスウィフト、水先案内人としてがんばってまいります。 

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