天狗納豆と「歴史を学ぶ意義」

水戸と言えば納豆。
しかし水戸で納豆が名物になったのは、明治時代のことだという。
歴史作家の河合敦氏の著作『この歴史、知らなくてすみません。』(PHP文庫 2018年)によれば、納豆を水戸の名物にしたのは笹沼清左衛門。
〈清左衛門は幕末の水戸に生まれましたが、ある日、本を読んでいると「昔、江戸の人々は糸引き納豆を好んで食べていた」と書かれていて、これを見た瞬間に、「よし、これを水戸の名物にしよう!」と思いつきます。〉(上掲書p.181)
清左衛門はそれから何年も苦労して納豆を商品化してゆく。
明治に出来た人が集まる場所、鉄道の駅で納豆を販売するというアイディアも当たって、納豆は水戸の名物となったそうだ。
清左衛門の作った「天狗納豆」の由来は、尊王攘夷を主張した天狗党にちなむという。
伝統とか習慣の中にはこうした意外に新しいものもあって、そこには「我よりいにしえを為す」の気概を持った人間のドラマがあったりする。
そうした人間ドラマから気合いをもらったりするのも、現代人が歴史を学ぶ意義であろう。