「大阪の会社はね、よく本社を東京に移すでしょう。
でも京都の会社は本社を東京に移さない。
なんでかわかります?
京都から本社移す必要がないからですよ」
そんな話を聞いたのは京都の霊山歴史館でだった。
KYOTOは世界ブランドで世界中みんな知っている。みなが京都に来たがるし、京都のメンバーになりたがる。
せっかく京都のメンバーなのに、なぜ東京“なんぞ”に下っていく必要があるのか。話してくれた人の言葉の端々からそんな自信がみなぎっていた。
「ゲニウス・ロキ(genius loci)」という言葉がある。
もともとはローマ神話の土地の守護精霊のことで、今では「土地柄」「その土地の雰囲気」みたいな意味で使われるらしいが、京都のゲニウス・ロキは本来の意味で誇り高い守護精霊なのだろう。
ゲニウス・ロキ、土地の守護精霊という言葉が与えられるといろいろ空想が広がる。
北海道のゲニウス・ロキはおおらかで心が広そうだなとか、沖縄のゲニウス・ロキは三線弾きながら訪れた人に魔法をかけて魅了したりして”ヒキ”が強そうだなとか。
ゲニウス・ロキは物理的な土地以外にもいる。
仮想空間であるSNSやネットサービスもまたそれぞれのゲニウス・ロキを持つ。
Facebookのゲニウス・ロキはちょっと傲慢で見栄っ張りだし、Twitterのゲニウス・ロキは人を見下すところがある。
YouTubeのゲニウス・ロキは人間の時間とやる気を吸い取って糧とするし、Amazonのゲニウス・ロキは人間の物欲を刺激するのがうまい※。
自分が今いる場所のゲニウス・ロキがどんな性格でどんな性質を持つか妄想し、何かあったら「この土地のゲニウス・ロキのせいだな…」と呟いてみるのも、中2心をくすぐられて趣き深いと思うのでお試しください。