地方都市にいくとポツンと建っている、おしゃれな繁盛パン屋は誰が経営しているのか?ー藤野英人著『ヤンキーの虎』をお勧めする。

「地方都市に行くとオシャレなパン屋がポツン建っていてかなり繁盛している。いったいあれは誰が経営しているのか。
それは、『ヤンキーの虎』だ!」
藤野英人『ヤンキーの虎 新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社 2016年)はそんな本だ。ベッドタウン育ちのぼくにとっては滅法面白かったのでご紹介したい。
「ヤンキーの虎」は原田曜平氏の提唱した「マイルドヤンキー」をもとにした言葉だ。
経営コンサルタントで日本全国を回っている藤野氏によれば、人口減少などによりマーケットが縮小している地方においても、しっかり儲けている若い事業家がたくさんいるという。彼らこそが「ヤンキーの虎」だ、と著者はいう。
ヤンキーの虎たちの特徴は、
〈「地方を本拠地にしていて、地方でミニコングロマリット(様々な業種・業務に参入している企業体)化している、地方土着の企業、あるいは起業家」〉(前掲書kindle版p17)だ。
ヤンキーの虎たちは、「儲かりそうなものはなんでもやる」ために、ミニコングロマリット内の複数事業は互いに関連が薄いことも多い。
建設業、不動産業、介護施設経営、ガソリンスタンド経営…互いに脈絡のない事業を、経営者が統括している。
そしてある事業の見通しが暗いとあっさり撤退し、ミニコングロマリット内のほかの事業に人を振り分ける。
複数事業のヘッドクォーターが一つなので、バックヤード費用がセーブできるのもヤンキーの虎スタイルのメリットだ。
なぜ縮小市場の地方で若い「ヤンキーの虎」が勝てるのか。
前掲書によれば、「競争相手がヌルいから」。
(あくまで前掲書が正しければだが)地方都市では、競合相手の経営者というのは高齢化していて、昔ながらの商売の仕方をしている。自分のリタイアとともにこのまま緩やかに店じまいしていければよいとすら考えている。

 

一方、東京など中央からの大資本は「選択と集中」で地方支店から撤退していたりする。
その空白地帯に若い「ヤンキーの虎」たちは東京などの成功モデルを「タイムマシン経営」で地方に持ってきて成功するのだという。
冒頭の、地方都市のオシャレなパン屋もその一例だ。
『ヤンキーの虎』にはまだまだ面白いことが書いてあって、人間社会のダイナミズムを感じて楽しい本なのでよかったらぜひ。

付記)2014年刊行の『ヤンキー経済』では、マイルドヤンキー向けにおしゃれに中古ブランド品買えるアプリがあったら流行るんじゃない?って書いてあって(p.160)、メルカリの隆盛を予言しててすごい(メルカリは2013年設立とのこと。博報堂がメルカリの運営に携わっているかは中の人教えてください)。KREVAの『イッサイガッサイ』も同書で知りました)