サンクコストと即断即決。

とある往診サービスが撤退を発表した。診療報酬が下げられると判明した途端の、即断即決である。
 
道義的にどうかと思うが、純粋に経営的な視点だけからみれば、儲からなそうな分野から撤退するというのは仕方のないことかもしれない。
邪推だが、こうした即断即決が出来るのは、経営の実権を持つ人が医者ではなく、プロ経営者だからだろうか。
医者が経営している場合には、思い入れという名の、あえていえばサンクコストがあるからぐずぐずと撤退できない気がする。
 
ここ20数年、医療という営みを眺めてきた。
ぐいぐいと分院展開をしてゆく凄腕理事長や、どんどんと医療外の分野の事業に進出してゆく若手医師も遠くから見てきて気づいたことがある。
精力的に活動範囲を広げてゆく医師たちは、みな医大卒業後数年でいろいろなことを手がけてゆく。
これはそれぞれの意欲や能力が高いことや若さゆえのパワーもあるが、サンクコストの低さということもあるのではなかろうか。
 
旧来の医局制度では、医者として一人前とされるまで10年以上の歳月を必要としたと思う。
10年以上の時間を自分の専門とする分野に投入すると、それは一種のサンクコストとなってしまう。
何か問題意識を持ったとしても、「今さら医者以外できないしなあ」とか「専門外のことに手を出せないよなあ」という感情が生まれてしまう。
これは一種のサンクコストと言ってよいだろう。
 
我が身を振り返ってみると、俗な言い方だが大儲け間違いなしの事業をやろうと思ったことも正直ある。
だがそのたびに、「今やっている診療を放り投げてそっちやるわけにもいかないよなあ」と諦めてしまった。
今となってはもう間に合わないし、後悔しても仕方がないことではあるが、今でも時々あああの時即断即決してあれやっとけばよかったと思うことはある。
ああ、こんなことならあの時やっときゃよかったなあ、タピオカ屋。