北千住よみうりカルチャーで公開講座『認知症との上手な付き合い方~家族の心得~』開催しました!

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3月26日日曜日、北千住のよみうりカルチャーで公開講座認知症との上手な付き合い方~家族の心得~』開催しました!
たくさんの方にご参加いただき、さまざまなタイプの認知症について、家族としてどう支えていくべきかなどなどをお話しさせていただきました。

 

次回は夏か秋に開催予定です。

ご参加いただいた皆様、機会をいただいたよみうりカルチャー様、ほんとうにありがとうございます!

 

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「運がいい人」とはどういう人か

世の中には、運がいい人、というのがいる。

普通なら思いもつかないような出会いに恵まれたり、懸賞や宝くじにもバンバン当たる。歩いていればお金も拾うし、たまたまカフェで隣りあった人から大きな仕事の話をもらったりもする。

生まれついてのラッキー・マンやラッキー・ウーマンである彼らは口を揃えてこういう。「いやー運が良かっただけだよ」。

 

運がいい人っているよな、ああうらやましい妬ましい、生まれ変わったら自分もそんな星のもとに、なんてグチるんじゃなく、「運がいい人」をしっかり研究した人がいる。

イギリスの心理学者、リチャード・ワイズマン博士である。

この人はもともとマジシャンで、マジックの裏に潜む人間心理の面白さに目覚めてロンドン大学エジンバラ大学で心理学の研究をし博士号をとった。

ワイズマン博士を一躍有名にしたのが、「運のいい人」の研究である。以下、博士の著書『運のいい人の法則』(角川文庫 H23年)をもとに述べる。

「運のいい人」には何か法則があるのではないか、と博士は考えた。

「運のいい人」の法則を調べるには、「運のいい人」をたくさん集めてきて共通点を探ったり、「運のいい人」グループと「運の悪い人」グループの差を集めたりすればよい。

だがしかし、そもそも「運のいい人」「運の悪い人」なんて非科学的な存在をどう扱えばいいのか。普通はそこで途方に暮れてしまうのだが、博士のやりかたはシンプルだった。単純に、「あなたは自分が幸運な人間と思うか不運な人間と思うか」でカテゴリー分けしたのである(詳しくは上掲書 p.45-46)。

だから厳密には、ワイズマン博士のいう「運のいい人」は「自分が幸運だと思う人」であり、「運が悪い人」は「自分が不運だと思う人」である。

研究にはとっかかりが必要だから、定義づけさえはっきりしておけばひとまずはそれでいいのだ。

 

次に博士は「運がいい人」は「運が悪い人」よりも予知能力みたいなものがあるのではないかと仮説を立て実証した。

イギリス全土の「運がいい人」と「運が悪い人」に、宝くじの当たり数字を予想してもらったのだ。実験に用いられた宝くじは1から49までの数字を6つ選んで当てるタイプのもので、もし「運がいい人」=予知能力がある人であるならば、全英「運のいい人」グループが選んだ数字は当たりやすいはずだ。

結果は見事に大外れ。「運のいい人」グループが選んだ数字も、「運が悪い人」グループが選んだ数字も、当選率は大差なかった。

「運がいい」とは予知能力ではなさそうだ。そう簡単にスーパーナチュラルなことは起こらない。

 

ワイズマン博士はいろんな実験をしている。

興味深い実験の一つが喫茶店で行われたものだ。

喫茶店の入り口の路上に5ポンド札を置き、店内のテーブルにはビジネスに成功した実業家役の人を仕込んでおく。隠しカメラも忍ばせて、「運がいい人」と「運が悪い人」をその喫茶店に呼んで、二人の行動を観察するのだ。

「運がいい人」代表のマーティンはその喫茶店に近づくなり入口に落ちている5ポンド札に気づいた。「ラッキー」とでも言わんばかりに5ポンド札を拾って店に入る。

マーティンはコーヒーを頼んで席につくと、何分もしないうちに隣の席の実業家(役の人)に話しかけて簡単な自己紹介をして、コーヒーをおごるよと申し出たのだ。二人はしばし会話を楽しんだ。

「運が悪い人」代表のブレンダの行動はまったく違った。

ブレンダはうつろな目をして喫茶店に入ってきた。路上に置かれた5ポンド札には気づかないままだった。

コーヒーを頼んで席についたブレンダは、誰とも話そうとはせずじっとワイズマン博士が来るのを待っているだけだった。

 

同じ数十分の間に、マーティンは5ポンドを拾い、成功した実業家と会話を楽しんだ。もしこれが実験ではなく実生活ならその実業家から大きな仕事のオファーが得られるかもしれない。

一方、ブレンダには何も起こらなかった。二人の差は何だろう?

「運のいい人」は目の前の5ポンド札に気づくが、「運の悪い人」は気づかない。
「運のいい人」は周囲にオープンだが、「運の悪い人」は自分の中に閉じこもる。

注意力と開放性は、「運のいい人」の特徴なのだ。

 

実際、「開放性」は大きなキーワードだ。

心理的傾向を調べると、「運のいい人」は外交的で、リラックスしており、オープンな傾向にあるという(p.59-109)。

 

考えてみると、「運がいい人」が外に対して開いているというのは論理的である。
「運」というのは自分の外からやってくる。自分の内側にあるものは実力だったり体力だったり、とにかく「運」ではない。

自分以外の外部要素で何かことが成し遂げられたとき、人はそれを「運」と呼ぶ。

だから外に対して開いている人には「運」が舞い込むし、閉じている人には「運」はやってこない。

ワイズマン博士の研究でも、「運がいい人」(厳密には自分が幸運の持ち主と思っている人、だが)は友人・知人のネットワークが広いという。

友人・知人のネットワークが広ければ、それだけ「いい話」が転がりこむ可能性が高いわけだ。

 

少しだけ脱線すると、この話は人間性についてちょっとした希望を抱かせる。

もし人間が邪悪な存在ならば、他者とつながっていればいるほどマイナスな出来事が転がりこむだろう。しかし他者とのつながりが多い人ほど「運がいい」となると、他者がもたらすものはマイナスよりプラスが多いということになるはずだ。
つまり、総じて人間というものはよいものだ、ということにならないだろうか。
まあマイナスばかりもたらす人もいますけどね。

ワイズマン博士は最終的に、「運のいい人の法則」として下記の4つを挙げた。

 法則1.チャンスを最大限に広げる

 法則2.虫の知らせを聞き逃さない

 法則3.幸運を期待する

 法則4.不運を幸運に変える

法則1は初めのほうに述べたように、外からやってくる「運」に対しオープンであるということや、目の前にあるチャンスを見逃さない、試行錯誤する、などのことだ。

調査の中で出会った「宝くじや懸賞に何度も当たっている」人は、単に他人の何十倍も懸賞に応募しているだけのことだったという。試行回数の問題なのだ。
法則2は、勘や虫の知らせというのは成功パターン・失敗パターンを意識下で認識(語義矛盾だが)している表れだから無視するな、みたいな話である。

法則3は、「運のいい人」ほど粘り強く物事に取り組むということで、自分は幸運だからきっとうまく行く、という信念がその源泉だという。

法則4は、悪い出来事からも何か教訓を得ようという姿勢が大事みたいな話。

 

ワイズマン博士の「運のいい人の法則」では一切超自然的な話は出てこない。非常に合理的かつ論理的で、そういうのが好きな人にはお勧めです。

 

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誰もが絶対食べてみたくなるカレーの話・小山薫堂『もったいない主義』より(R)

カレーの話。

 

どんなに満腹の人にでも、必ず食べてみたいという気持ちにさせるカレーがある。
なにも特殊なカレーではない。
ふつうの人参とふつうのじゃがいも、ふつうの肉の入ったふつうのカレーである。

 

ある大学の、オープンキャンパスの日のできごと。
大学1年生の前に、大鍋いっぱいのカレーが置かれる。
講師が学生に聞く。
「このカレー、食べてみたい人はいますか」
昼下がり、空腹の者はおらず、誰も手を挙げない。

 

「誰もいませんか。
でも、これを作った人のことを知れば、きっと食べたくなるはずです。
では、作った方に、入ってきていただきましょう」
そう言って講師は、一人の中年女性を招き入れた。

 

講師が女性に聞く。
これ、いつも家族に作っているカレーですか?
「はい」と女性は答え、「特に次男はこのカレーが大好きで、こればっかり食べてます」と言う。
次男さんは今どこに?
「仕事でアメリカにいます」
ほう、ご次男さんのお仕事は?
「スポーツ関係です。野球選手をやっています」
失礼ですが、お名前は。
「鈴木といいます」
なんと、女性はマリナーズ(当時)のイチロー選手のお母さんだったのだ。

 

イチロー選手のカレー好きは有名で、彼は一時期まで毎朝毎朝カレーを食べて試合に出ていたそうだ。
そのイチローを育てたカレーが目の前にあるとなれば、誰だって食べてみたいと思うのではないか。

 

映画「おくりびと」の脚本家、小山薫堂の著書「もったいない主義」(幻冬舎新書 2006年)に出てくる話(p.19-21)で、最近読んでえらく感心した。
その場にいたら絶対食べていただろうなと思い、ブランドとか付加価値とかってことが、初めて体感できた。

 

ちなみに、この小山薫堂という人、根っからのカレー好きのようだ。
なにしろ「もったいない主義」では36回、「考えないヒント」(幻冬舎新書 2006年)では52回(うち5回は“カリ~”)も「カレー」という単語が出てくる。
(FB2013年7月25日を再掲)

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ファミレスでマルチの勧誘を見た話(R)

数年前のできごと。
 ファミレスに入ったら、隣の席でマルチ商法の勧誘の真っ最中だった。茶髪の若い女性が70代くらいのおじさまを一生懸命口説いている。
つい聞き耳を立ててしまったのだが、なんでもゲームの中でプレーヤー同士がトレードをするときに使うアプリをダウンロードする仕組みに30万出資すると、自動的に1000人の「子」がついてきて、あがりの20%が手に入るのだとか。
うさんくさいことこの上ないのだが、おじさまは熱心に聴き入って自分の友人や知人にまで勧誘の電話をかけはじめた。

 

経済学の基本は「ノー・フリー・ランチ」、ただ飯はない、言い換えれば、そんなにうまい話はない、というものだそうだ。
もしウォール街をランダム・ウォークしていて路上に100ドル札が落ちていても、決して拾ってはいけない。もしそれが本物のお札なら、誰かがとっくに拾っているはずだからだ。
うまい話は今まで放置されているはずがないし、絶対にそれは偽札に決まっている。

実際にはとりあえず拾いますけどね。

 

またもしそれが100億分の1の確率で本当のもうけ話でも、その儲け話を持ってきた奴がどれくらい儲けるかを見極めるのも肝心だ。
経済誌フォーブズの発行責任者スティーブ・フォーブズは「投資のアドバイスというものは、もらうより売るほうがはるかに儲かる」と言われて育ったそうだし、19世紀のゴールドラッシュで一番儲けたのは、全米から金を堀りに来た人ではなくその人たちにツルハシを売っていた人だという。

 

その時は「浜の真砂は尽きるとも 世に詐欺まがいの種は尽きまじ」とつぶやきながらファミレスを後にしたのだが、詐欺まがいにひっかかるひとを見殺しにしたようで今も少々心が痛む。

 

今から思えば、あの時ぼくの持っているスマホのアプリを分けてあげればよかった。
このアプリはたまたま手に入れたものだがきわめてすぐれもので、このアプリを使うとどんな詐欺でもたちどころに見破ることができるのだ。

まだ世に知られていないが、数か月後にはマスコミはこの話題で持ちきりになるだろうし、ダウンロード数もポケモンGoをぶっちぎりで抜くだろう。

MITとUCLA、FBIとCIAが共同開発し、skypeでアメリカと直結されているこのアプリの名前は『詐欺 de sky®』、 今なら格安、30万円で販売代理店の権利をお売りできる。

(FB2013年2月27日を加筆再掲)

 

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彼方からの手紙。 - カエル先生・高橋宏和ブログ

 

知とアービトレージ(R)

「センパイは昔っからアービトレージだからなあ」
少々酔いの回った後輩Cがそう言ったのは夜の12時を越えたころ。
言ってくれるねえ。ところで、アービとレイジって何?修二と彰みたいなもの?青春アミーゴ

 

「知らないんすか!?サイテー取引ってことっすよ」
仮にも先輩にむかってサイテーとは何だ、陰口はきちんと陰で言えと言う言葉が口から出かかったがぐっと飲み込んだ。
酔っぱらったCがふらふらとトイレに行ってしまったからである。
代わりに携帯で「アービトレージ」を検索してみる。

 

「アービトレージ…物の値段と実際の価値の差を利用して利益を得ること。サヤ取り、裁定取引」みたいなことが書いてある。
なるほど、最低取引ではなく裁定取引と書くのか、と先ほどの憤りは姿を潜めて納得と平静が心に訪れる。
インターネットは狂気を加速し過熱させ増幅させるメディアだが、時々はこんなふうに頭を冷やしてくれることもある。
ちなみにさっきググったら「青春アミーゴby修二と彰」は2005年だった。月日の経つのは早い。
閑話休題

 

アービトレージ、裁定取引とはこんなことのようだ。
ほんとはすっごく素晴らしい品物アルファがここにあるとする。
本来は100万円の価値があるアルファの素晴らしさにまだみんなは気づいていないので、今のところは1万円で手に入る。
そこでいち早くアルファの価値に気づいて1万円で手に入れて、みんなが価値に気づいたときに100万円で売って99万円の利益を得る。
あるいは、場所によって物の価値は異なるのでそれを利用するやり方もある。
漁村では魚はいくらでも手に入るが、山奥の村では貴重だ。
農業国では農産物はあって当たり前だが工業国では高く売れる。
そこで漁村で魚を安く仕入れ山奥に持っていって高く売って利益を得たり、農業国の農産物を工業国に輸入したりする商業が成立する。
意地悪くみれば商人は何も自分で作り出していないのに、莫大な利益を得ているということも出来る。

 

後輩というのはよく見ているもので、確かにぼくのやっていることはアービトレージかも知れない。
医療の世界では広く知られていることを医療以外の世界に持っていって面白がってもらったり、その逆にビジネスや行政の世界の人や本から聞きかじったり読みかじったりした話を医療業界に持ち帰ったり。
そこに一抹のうさんくささがあることは自覚しているが、面白いからこそやめられない。
自分がゼロから始めたことでもないのに偉そうに話すのもどうかなあと思いつつ、世界を豊かにしたのは商業だし、目利きじゃなきゃアービトレージも出来ないだろうと自分を納得させつつ日々を過ごすわけである。

(FB 2015年3月17日を再掲)

 

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3月26日日曜日、北千住で公開講座『認知症との上手な付き合い方』開催します!

3月26日日曜日、よみうりカルチャー北千住で公開講座認知症との上手な付き合い方』開催します!

もの忘れと認知症との違い、さまざまなタイプの認知症について、認知症のリスクを減らす食生活とは、大事な人が認知症になったらなどなど、盛りだくさんでお送りします。ぜひご参加ください!
詳しくはこちら↓

認知症との上手な付き合い方〜家族の心得〜:よみうりカルチャー北千住:よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)

R-1でのブルゾンちえみネタ飛び号泣を憂う。

かえすがえすも残念だったのはR-1のブルゾンちえみである。

ネタが飛んでしまったとか言って泣いてしまったことは、彼女の人気を失速させるきっかけになるだろう。

 

その昔、毒舌で人気だったトニー谷が人気が落ちたきっかけはご子息の誘拐事件で、マスコミの前で泣き崩れるトニー谷の姿に、世間は「ほんとはいい人なんザンス」と思ってしまった。毒舌スタイルが「演じられているもの」とばれてしまったのだ。
これからはブルゾンちえみの同じネタを見ても、「がんばって小生意気なワーキング・ガールのネタを演じている若い女性」としてしか見えなくなってしまう。そこに応援はあっても笑いはない。再起を切に願う。

ブルゾンちえみトニー谷に個人としては同情するが、「素を見せる」ことが致命傷になるスタイルの芸能人というのは存在する。

誰だって、すっぴん・上下スエットと健康サンダルで近所のコンビニに買い物に行く叶(かのう)姉妹なんか見たくもないのだ。


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