オシャレなお店がわかりにくい場所にある理由。

こじんまりとした気の利いたレストラン、しっとりと落ち着いたバー、海外から取り寄せた雑貨を売る雑貨店、ハイセンスな服ばかりそろえた服屋。
オシャレなお店はいろいろあるが、ちょっとだけアクセスの悪いところにあることが多い。繁華街のど真ん中、駅前徒歩0分とかではなく、渋谷の外れ、原宿の裏側、銀座の路地を入ったところなどなど、繁華街ではあるけど「ちょっとわかりにくい」場所にあるのが共通点だ。

お店をやるのに場所がわかりにくいというのはデメリットに見えるが、わかりにくい場所でオシャレなお店をやるにはもちろん理由やメリットもある。

コスパ、チャレンジしやすさ、客の選別である。

 

コスパはコストパフォーマンスで、繁華街のど真ん中、ビルの1階というのは家賃が高い。その分だけ値段を上げるか利益を削るしかない。お店の場所を繁華街からちょっと離れたところやビルの地下1階または2階以上に設定することで、家賃(店賃)をずいぶん下げることができる。

サイゼリヤなど郊外発祥型のファミレスが都心に進出するときにはビルの地下1階か2階以上を選ぶのも理由の一部はそれであろう。大戸屋の場合は、若い女性一人客が気軽にお店に入りやすいことも地下店舗のメリットとして考えているという。「あの女性、一人で定食屋に入るぞ」とまわりに思われなくて済むのだとか。この社会では有形無形のプレッシャーが女性にかかっているわけだがそれはまた別の機会に。

繁華街の中心部というのは言ってみれば保守本流まっただ中、流行のトレンドをがっちりとらえてしっかり稼がなければならない。
またそれぞれの業界の「常識」が色濃く出るのが繁華街ど真ん中で、お互いがお互いをチェックして知らず知らずのうちに今現在の常識から外れないように自制してしまうかもしれない。
スタートトゥデイ社はファッション関係の会社でありながら本社を今も千葉市幕張においていて、社長はその理由の一つに自身の郷土愛やオフィス賃料とともに「東京にいると流行のトレンドを追いかけることに精いっぱいで疲弊してしまう。あえて流行の中心から外れたところに身をおくことで流行を外側から眺めて客観視することができる」と以前にインタビューで述べていた。

オシャレなお店ではアクセスの悪さが客の選別を可能にする、という点について述べる。
高級店は値段を高めにすることで、リッチな人以外をうまい具合に排除して良好な客層だけを相手に雰囲気のよい店をつくる。"一流”の客ばかりがいる"一流”のお店の雰囲気に魅かれて、さらに"一流”のお客が集まる。
「あなたは"一流”じゃないから来ないでください」と露骨な客の選別をするとカドが立つから、値段設定でお客の選別を行うわけである。
そんなことを聞いてつらつら考えると、露骨じゃない客の選別方法にはアクセスという方法もあるのだ。

前述の通り、オシャレな店ってちょっとアクセスの悪い場所にあることが多い。
アクセスの悪い場所に位置することで、わざわざそのお店に行こうと思うオシャレなお客さん以外をスマートに排除することができる。オシャレなお客さんというのは少々アクセスの悪いお店だろうが、オシャレなお店を探し出す労力を払う覚悟のある人たちばかりだ。
オシャレなお店のwebサイトの地図も、デザイン的にはかっこいいが地図としてはよくわからないものが多い。仮説だが、これもまた、そのオシャレ地図を読み解く気合のある人しか来ないでくださいという裏の意図があるのではないか。
つまりオシャレなお店がわかりにくい場所にあったり、そうしたお店のオシャレ地図がわかりにくいのは客の選別のためかもしれない。
「あなたは"オシャレ”じゃないから来ないでください」と露骨な選別をするとカドが立つから、アクセスの悪さを利用するわけである。「大人の隠れ家」とかね。


そんなこととをつらつらと考えながら、ぼくは待ち合わせで指定されたお店に全くたどりつけないで困り果てている。かれこれ1時間以上迷っているが、まだお店が見つからない。

確か指定されたお店は、非常にオシャレなお店だったはずだが…。

 
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