団塊Jr.&ロスジェネが聴き直す爆風スランプ『45歳の地図』

2018年も残り1か月。今年、45歳となった。
頭の中にリフレインするのは爆風スランプ『45歳の地図』。


1973年、誕生。

1971年から1974年に生まれたぼくたち団塊Jr.は、日本の最後のボリュームゾーンだ。

堺屋太一氏が命名した「団塊の世代」を親に持つぼくらはまさに、「銀メッキのスプーン」を咥えて生まれてきた。

日本の国民総生産(GNP)が西ドイツを抜いて世界第2位となったのが1968年。
公害とかもあったけど、基本は国として上り調子で、ぼくが高校生の1989年には日本企業がアメリカのでっかいビルを買収したりしてたのだ。


そんないけいけどんどんな1989年に発表されたのが爆風スランプ『45歳の地図』。

尾崎豊の『17歳の地図』のパロディな題名のこの曲は、団塊Jr.でロスジェネな現45歳が今聞き直すと、時代の無邪気さにただただ胸が切なくなる。


〈わたしは45歳、会社に入って二十余年、黙々とわき目もふらず働いた〉

会社に入って二十余年!?会社もつぶれずに、一つの会社にずっといられたってこと?
てことは当然、正社員!非正規や派遣なんかじゃないって、特権階級じゃないか。

もくもくとわき目もふらずに働くだけで会社に居続けられたなんてなんて幸運なんだろう!コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力も求められず、社内の公用語が英語になることもなく、ただただ黙々とわき目もふらずに働くだけで二十余年も会社に居続けられるなんて、本当になんて幸運なんだろう!!

 

〈(45才で)気がつきゃ息子も20歳、一流私立大学生。俺より金を喰らう〉

45歳で息子が二十歳!

未婚化晩婚化少子化、託児所つくろうとすれば住民に反対運動起こされるし奨学金ローン!

 

〈私は毎週日曜日の夜、自分で自分の靴を磨く

一家の主であるこの私がだ!

女房は私の足が臭いからと言って靴を磨くのを拒否したのだ!〉

「一家の主」!

自分の靴くらい自分で磨きなさいよ。

蛇足だが、1989年当時は、それが風刺や嘆きやギャグとして成立したということだ。「サザエさん」あたりを漁れば、夫が奥さんに靴下履かせてもらったり、仕事から帰ってきて部屋着の着物に着替えさせてもらったりする描写が拾えると思う。


〈わたしの青春を返せ〉〈(息子は)コンパコンパに明け暮れ〉と若き日のサンプラザ中野は歌うが、学業とバイトと就活に明け暮れざるを得ない現代大学生からすれば、青春はいらないから内定と安定をくれ、という感じなのだろう。


1989年。今から30年前。

確か当時は「農協ツアー」なんていって、小金を貯めた農協メンバーが団体で海外旅行に行くことを皮肉ったり、日本人はみんながみんな自分は中流階級だと思っているなんていって「一億総中流」と自虐したりしていたものだ。

今となっては「一億総中流」という言葉のなんと甘美なことか!

 

若き日のサンプラザ中野は『Runner』でこうも歌った。

<かげりのない少年の季節は過ぎ去っていく

風はいつも強く吹いている>

 

30年ぶりに爆風スランプのCDを引っ張り出した団塊Jr.でロスジェネなぼくは思う。

かげりまくった中年の季節もまた過ぎ去っていく。

向かい風は、いったいいつまで強く吹き続けるのだろうか。

いつかどこかにたどり着いたら、いったい誰になにを打ち明ければいいんだろう。

 

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