歳なりに歳をとる(7)タンデム、あるいは旅は続く。

バトリス・ルコントの映画『タンデム』が、ずっと頭の中で流れている。老年期のラジオスター、モルテスが、おとものリヴドとともにおんぼろフォードでフランスの片田舎を行く。どこまでも、いつまでも。走り去ったあとには、何も無い。現代のドン・キホーテとサンチョ・パンサ。
人生の後半期をどう過ごすかのヒントを求めて、「林住期」や「遊行期」の先達の言葉を漁ってきた。
そこで行き当たったことの一つが、どうも自分で自分が嫌いになるようなことはしないほうがよさそうだ、ということだ。
人生でいちばん長く付き合うのは自分自身だから、長い付き合いの自分を嫌うような言動はしないほうがよい。自己嫌悪に自己憐憫に自己破産あたりは、出来れば避けて通りたい。
一方で、逃げも隠れもしない人生後半に入って、今までやらかしてきたことはどうするか。結論から言うと、まあしゃあないんじゃないっすかねー。
他人と過去は変えられない。ここらで一つ人生の棚卸しをして、やらかしてしまったこと、あるいはやらないでほったらかしてきたこと、そこらへんをくよくよ悔やんだりせず、「反省の箱」にでも入れて封印して置いておけばいいんじゃないでしょうか。嗚呼、人生の後悔の半分はやらかしてしまった馬鹿げたこと、残りの半分はやらなかった馬鹿げたことが引き受ける。
馬鹿げたことをやらかしてしまった自分を責め続けるのはいったんやめにしよう。やるべきことをやらなかった自分を咎めるのはいったんやめにしよう。
友よ、自己と和解せよ、過去と和解せよ、神と和解せよ、ネコと和解せよ。
人生は短く、そして長い。
ライフ・ゴーズ・オン、人生は続く。
しかたない、セ・ラ・ヴィ、もうまんたい、ノー・プロブレーマ、めいばんふぁ、ケンチャナヨ。
言い訳の言葉をたっぷり用意して、まだまだ道を行く。

 

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