「入門したら徹底的に”遊ば”せる」。深夜のバーで噺家が言った。

「あたしらの世界はね、入門したら徹底的に遊ばせるんです」
深夜のバーで噺家が言った。
「徹底的に遊ばせるとね、どこかで『ああ、“遊ぶ”といっても所詮はこんなもんか』ってなって、そこから芸の稽古に身が入る」
数十年前に聞いた話。
 その一門だけの話なのか、今はどうなのかは知らない。しかしその育成方法、選抜方法は面白い。
 
「遊びは芸の肥やし」の世界の話だから特殊だけれど、欲望を押し殺して何年も修行して、ようやくモノになったと思ったら“遊び”で身を滅ぼす。そういう人もいるだろう。その場合、無駄になるものは多い。師匠や兄弟子が親身に指導した時間も無駄になる。
だったら一番はじめに“遊ば”せて、身を持ち崩す人はそこでアウト、地獄めぐり極楽めぐりをして“遊び”の世界とほどほどで付き合って、”遊び”を芸の肥やしにできる者だけを選抜して育てる、ということなのかもしれない。
 
「板に立ってお客さんの大爆笑を受ける。あれほどの快感はない。あの瞬間は、カネもなんにもいらないと思っちゃう」
お笑い芸人の人がそう書いていたのを覚えている。
人気漫画『推しの子』でも女タラシの監督が似たようなことを言っていた。「5,6番目」というのが妙にリアルですね。『推しの子』、めっちゃ面白いです。



桑田佳祐氏も「若いころはツアーのとき”お姉ちゃん”と遊んでたけど、今は寝ちゃう。いいステージやりたいから」みたいなことを大昔『ぴあ』のインタビューで言ってた。何歳のときかはわかりませんが。
 
「なんだかんだで芸事や作品作ること、演じることや演奏することが一番気持ちいいし面白い」と感じる人がクリエイターを続けていくのでしょうね。キングカズとかも「なんだかんだで自分でサッカーをプレイするのが一番面白い」と思ってるんだと思う。知らんけど。