「お前ら、1人でメシ喰ったりしてないだろうな?」
大先輩に奢られながら、唐突にそう言われた。
大先輩は一代で上場企業を築いた人だから、成功者の部類だろう。
冒頭の言葉は、なにもぼくらが大先輩に隠れてうまいものを食べてるんじゃないだろうなということではない。
ビジネスでも何でも、仕事をしていく上で誰かとメシを食うというのは大事な機会である。
一緒にメシを食うことで関係を構築できるし、つながりを深めることができる。 そんな貴重な機会を、おまえらは1人メシでみすみすムダにしていないだろうなという戒めの言葉だ。
「同じ釜のメシを喰う」というように、飲食を伴う付き合いは古来より人の縁を深めるとされてきた。
英語の「company(仲間、会社)」という言葉も、 「com(ともに)」「panis(パンを食べる)」というラテン語から来ているという。
オンラインでの人とのやりとりがこれだけ盛んになっても、ビジネス会食というのは廃れない。
政治の世界でも、有権者や支援者との関係を深めるために政治家は夜な夜な二階建て三階建ての会食をこなす。
好き嫌いは別にして、飲食をともにすることが人間同士のつながりを深めることは事実だろう。
仕事とメシというものをそんなふうに感じながら時を過ごしてきたが、あるとき全く別の考えに出会った。
山本真司氏の『40歳からの仕事術』(新潮新書 2004年)という本でである。
40歳からのキャリア形成に悩む人たちへ向けた本なのだが、その中で「時間管理十訓」というのが出てくる(p.166)。
時間管理十訓のうち第八訓はこうだ。
〈第八訓 できれば昼食などのために外出しない。その分早く帰るほうが得。〉
これはこれでなるほどですね、なのだが、「仕事で成功するためには1人でメシを喰うな」という教えとどう両立させたらよいのか。
しばし考えて今のところ、仕事とメシの戦略の仮の結論はこうだ。
【ビジネスメシ戦略】
・若手時代 先輩のメシの誘いに(ある程度)乗り、関係構築をしたり仕事上の暗黙知やunwritten rulesを学ぶ。
・中堅時代 自分の時間を死守するため1人メシでさっと済ませる。
・ 経営層時代 仕事を取ってくるのが仕事となるので、1人メシはやめ、会食などを積極的に行い、ほかから仕事を取ってくる。
【ビジネスメシ戦略】、結論はこうだ。
ごちゃごちゃ言ってないでメシくらい好きに喰わせてくれ