<あなたと顧客との共同作業による新しい社会創造>(神田昌典氏)という言葉に打ちのめされた話。

〈あなたと顧客との共同作業による新しい社会創造〉
ガツンと頭を殴られたような衝撃。
『最強のコピーライティングバイブル』(横田伊佐男著 ダイヤモンド社)の、神田昌典氏による「監修者・解説者はじめに」の中のフレーズである。

医療機関の運営を通して、事業というものを考えている。
ぼく自身は、自分自身のなりわいを旧来の「町医者」というより、「コミュニティ・ベースド・ヘルスケア・プロバイダー」であり、患者さんのための「パス・ファインダー」兼「ゲート・オープナー」と位置づけている(カタカナばかりのうさんくささはさておき)。
その「ヘルスケア・プロバイダー」事業のために、日夜ヒントを求めている。

さて、事業というものは、顧客にどれだけの価値を提供できるのかという話だと思っていた。高い価値を提供するためにはスキルを磨かなくてはならない。

しかし、己一つのスキルを上げていく、ということには、行き詰まり感がある。ひと一人で出来ることには限界があるからだ。

だが、冒頭の言葉に会って、スコンと天井を抜けられそうな気がした。

いわゆる「お客様は神様です」的スタイルでは、クライアント側は静的なイメージだ。ナナメに言えば、ふんぞり返って、お金は出すものの自分から動こうとはしない、という悪しきイメージが「お客様は神様です」モデルからは感じられる。

だが、冒頭の〈あなたと顧客との共同作業による新しい社会創造〉には生き生きとしてダイナミックな、前向きのムーブメント感がある。
事業を通して私も変わるし、顧客も変わる。そして互いに良い影響を与えあい、それが新しい社会を作っていく。そんなワクワク感に満ちた事業イメージだ。

〈あなたと顧客との共同作業による新しい社会創造〉。
例えばアップル社の事業。
iPhoneiPadを世に出し、信者とすら呼ばれる顧客が熱狂的に受け入れ使い倒したことで、新しい社会が生まれた。人類は、iPhoneのない時代に戻れない。これは事業体と顧客との共同作業による新しい社会創造だった。
マイスペースgoogleプラスなど、さまざまなソーシャルネットワークが生まれたが、顧客との共同作業による新しい社会創造に一番成功したのはFacebookだった。少なくとも今のところは。
パタゴニアは「Don't buy this jacket」キャンペーンなどを通して、無駄な消費を控えて環境を守るライフスタイルを顧客とともに作ろうとしている。
フェアトレード業者もまた、搾取のない社会を顧客との共同作業で作ろうとしている。

振り返ってみれば、我が国にも、顧客との共同作業による新しい社会創造に成功した事業体はある。
岩波文庫の後ろのページには、昭和のはじめに岩波茂雄氏によってかかれた文章が載っている。
そこでは〈知識と美とを特権階級から奪い返す〉ために広く読書子の協力を呼びかける檄文が展開してされ、知識と美を永久に安価に提供するため、〈その達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。〉と結ばれている。岩波文庫発刊は、岩波茂雄氏にとって、顧客との共同作業による新しい社会創造のムーブメントだったのだ。
ソニーの顧客は〈真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場〉という理念にシビれたのだろうし、20世紀末には生活文化をともに創造する意気込みにあふれて若者がセゾンのお店に通ったのだろう。
いずれも、事業者と顧客との共同作業による新しい社会創造の例として挙げている。

あなた(=事業者、実行者)と顧客との共同作業による新しい社会創造、というイメージで、教育を、政治を、そして医療や介護を捉え直してみると何が起こるだろうか。そう考え始めると、途端に新たな光景が目の前に開けてくる。

冒頭の言葉に出会って、そんなワクワクにあふれているので、忘れないように書いてみた。オチは無いので悪しからず。

 

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