〈『うる星やつら』は究極のダイバーシティ〉(by深井龍之介氏)考。

〈『うる星やつら』は究極のダイバーシティ社会〉。そんなことを深井龍之介氏が書いている(『Forbes JAPAN』2022年6月号p.125)。

〈『うる星やつら』には、悪態ばかりついている二重人格の女の子(ラムの友達ラン)もいれば、とんでもない食いしん坊の僧侶「錯乱坊」(通称「チェリー」)もいます。主人公の諸星あたるなんて、ただの女好きです。そんな濃いキャラがケンカするなかで、相手の存在は決して否定しません。「お前はこうあるべきだ」と相手にイデオロギーを押しつけず、異なる他者の存在を肯定して生きる。究極の理想的なダイバーシティ(多様性)社会を、この漫画は実現しているのです。〉

深井氏はそんな『うる星やつら』の世界を、武士社会と貴族社会が混在した鎌倉時代初期と少し似ている、とも指摘している。

今までダイバーシティについて、落語の世界をイメージしていた。武士も庶民も、賢い者もそうでない者もそれぞれ居場所があり、〈人間の業の全肯定〉をしながら暮らす社会。
だが落語の世界はやや定常社会すぎる。
もしかしたら、〈濃いキャラがケンカするなかで、相手の存在は決して否定しません〉という『うる星やつら』のほうが、より現実のダイバーシティに近いかもしれない。

エネルギッシュで、ダイナミックで、がちゃがちゃしていて、ときに猥雑寸前で。
そんなダイバーシティ社会を作り上げ、そのなかで「暗いよせまいよ怖いよ」とか怯えたり、「お仕置きだっちゃ!」と言って怒ったりしながら、楽しく暮らしたいものである。
やっぱり海が好き。