我、ライナーノーツを愛す。

〈(略)現代において“いーかげん”であり続けることがいかに困難にことか。気が付くと、人間は自分自身のため、家族のため、企業のため、社会のため、国のために汗を流し、自分自身が望んだものはそんなものじゃないのは百も承知の上で大してどーでもいいような意味のないことに興奮して、鼻水まじりで檄を飛ばしていたりするのだ。そしていつの間にか、“熱中すること”なしでは生きられなくなったりする。別に何もせずに散歩でもしていればいいのにもかかわらずだ。(略)〉(田中宗一郎氏による『BECK MELLOW GOLD』ライナーノーツ 94年2月)

 

音楽配信時代になり無くなりつつあるのがライナーノーツだ。

国内盤CDの歌詞カードとともに記されたライナーノーツが好きで、よく読んだ。 当時はネットもまだまだ発展途上でSNSもないから、アーティストの情報も貴重だった。 やっつけ仕事のライナーノーツも無いわけでは無かったが、多くのライナーノーツは音楽愛とアーティストへの敬意で溢れていた。

 

山本安見氏の訳詩などもブラック・ミュージックやロックへの造詣の深さが溢れていて情報のない時代のまさに音楽の教科書だった。

『Good Lovin'』という下北系ギターポップコンピ盤の岡村詩野氏によるライナーノーツもすごくよくて、ああいうライナーノーツの良い文章がこのまま消えてしまうのは惜しい。

 

CDのライナーノーツのデータベースとか、それこそ『ライナーノーツ名文100選』みたいな本とか、誰か作ってくれたらいいのになあ。

『山本安見 all works』とか出版されたら買います。