日本はいかに団塊ジュニア世代の老害化を防ぐか(その6)~老害にならない助け方

老害にはなりたくねえよなあ、人間だもの。と思っていろいろ書いている。
 
老害化を防ぐ方法として、若者世代に対し
①邪魔をしない
②助ける
③覚悟する
を挙げた。
 
この中で、②の助けるにも3つのポイントと3つの方法がある。
 
ポイントは
②-1. 早く助ける
②-2. つらいときに助ける
②-3. 助けが要らなくなるよう助ける
だ。
 
トルコには、「早く与えることは、二倍与えることだ」という格言がある(曽野綾子『アラブの格言』新潮新書 2003年 p.94)。
政治の世界で、選挙に立候補した若者がいるとする。
多くの人は、「頑張って!当選したら応援するよ」と彼に声をかける。しかし立候補した若者は、当選する前の今の今、助けてほしいのだ。当選してからは地位も影響力も持てるが、徒手空拳で選挙に挑む無力な時にこそ、助けてほしい。そんな早くからの助けがもらえれば、当選後の助けの何倍もありがたく何にも代えがたいものだろう。まさに、早く与える者は2倍与える者である。
 
政治の世界の聞きかじりを続ける。
「政治とは、冠婚葬祭である」と喝破した政治家がいた。
人が集まる冠婚葬祭で存在感を示してこそ、次の選挙も安泰なわけで、地域によっては結婚披露宴に知り合いの知り合いの知り合いの議員が来てスピーチするなんて光景は今も見られると思う。
新郎新婦が「あの人、誰?」みたいな顔で議員センセイの「結婚には三つの袋があります」みたいなスピーチを聞いているのを見るのも、ジャパニーズ・トラディショナル・ウエディング・パーティーに参加する楽しみである。まああれも、顔を売りたい議員センセイとハクをつけたい新郎新婦親族の需給の一致した幸福なマリアージュといえよう。
 
で、大物政治家の中には、「結婚式には行かなくても葬式には必ず行く」という人がいるという。遺族がつらい思いをしている場こそ駆けつけるべき、という考えなのだろう。
何で読んだか忘れたが、その昔、ある議員の奥様が亡くなったときたくさんの議員仲間が弔問に訪れたが、田中角栄氏からだけは弔問に加えて、亡くなられて7日間、毎日御霊前の花が届けられたという。つらい時にこそ助けよ、という例として記憶している(出典ご存知のかた、教えてください)。
 
助けるの3つめのポイントとして、助けが要らなくなるよう助ける、を挙げたい。
 
助ける、という行為にもダークサイドがある。人間の支配欲、コントロール欲を刺激するのだ。
人間にはさまざまな欲望があるが、他者を支配したい、コントロールしたいという欲望はタチが悪い。
「あなたのためだから」と言って愚にもつかないアドバイスを受けたことは誰しもあるだろう。
病院で働いていると、患者さんが「友だちに何とかというサプリ勧められた」とか「知り合いにどこどこという病院を勧められた」とか口にするのをよく聞く。友人や知り合いも、もちろん良かれと思っていうのだろが、その根底に、他者に自分の言うことを聞かせたいとか自分の思いどおりに行動させたいという後ろ暗い欲求が皆無と言えるだろうか。
 
助けるという行為の底には他にも自分の優位性を確かめたいとか、自己効力感を得たいとか、助けることによって自己の生の充実させたいとか、そんな様々な要素が渦巻いている。まあ動機はどうあれ結果が良ければいいんすけどね、助けるという行為自体はいいことだから、いろいろ見えにくいんですよ、助ける側も助けられる側も。
 
で、そうしたさまざまな欲望に裏打ちさせていることに気づかないと、助ける側が助けられる側を依存させようとするようになるんですね。助けることは助けるんだけど、助けが必要な状況をそのままにして、いつまでも助ける側と助けられる側の立場を固定し、むしろ泥沼のように深化させようとしてしまう。
「ぼくは」、そういうのは美しくないと思うので、助けるなら助けられる側が助けが要らなくなる方向で助けるというのは大事だと思う。そう、「べき論」ではなく美意識なのです。
 
〈例えば新規店舗をオープンするときに、地方の役所はすぐに家賃補助や改装費補助といった補助金の案内をします。しかし、私が投資、経営しているプロジェクトではそうした申し出を一切断ります。補助金をいくらもらったところで、初期投資や運転資金の経費負担が少し減るだけにすぎないからです。
当たり前ですが、経営で大切なのは売り上げです。そして売り上げを作るのは、ほかならぬ地元の人たちです。
簡単なことですが、例えば地産地消のレストランなどができたら「地元の長老たちも一度は食べにいってあげる」「口コミで広げてあげる」。役所の人たちも「ランチでもいいから一度は皆で食べに行こう」という輪を広げることに徹底します。これがスタートアップ(創業)時のいちばん苦しい時期を乗り越える力になります。〉(木下斉『まちづくり幻想』SB新書 p.138-139)
 
上記の例でいえば、レストラン始めた若者を助けるのであれば補助金漬けにするより開店すぐに食べに行く、口コミを広げるような助けかたがよい。開店初期にお客が来れば早く軌道に乗る。軌道に乗れば助けは要らなくなる。
このような、助けが要らなくなるような助けかたを、年長者は若者に対してすると老害にならなくて済むのではなかろうか。
(続く)

 

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