2019-01-01から1年間の記事一覧

"引く”医者、"引かぬ”医者

「医者には“引く”人と“引かない”人がいてね、“引く”人は一生“引く”んだよね…」何かを諦めたように、指導医O先生は言った。研修医一年めのぼくは、ただうなづくだけだった。 “引く”というのは医者のスラングの一つで、担当患者さんが急変したり重症化したりす…

中條医院にCT搭載車が来る理由。

〈「未来はすでにここにある。ただ、均等に行き渡っていないだけだ」 ウィリアム・ギブスン〉(ダグ・スティーブンス『小売再生』プレジデント社 kindle版2537/3969より孫引き) 過疎地の未来、というのを考えたことがある。点在する住居、まばらなインフラ…

ア・パーフェクト・モーメントー地上の記憶。

パーフェクト・モーメント。完璧な瞬間。足りないものなど何もない。余計なものも何もない。未来のようにいつも懐かしく、過去のように常に新しい、過去と未来のはざまに立ち上った奇跡の一瞬。旅に出ると、そんな完璧な瞬間を体験することがある。 モンゴル…

経営という名のスポーツ、という話。

「おれらがJ3だとすると孫さんはセリエAとか。たしかにフェイズは違うけど同じスポーツをやってる」彼は言った。「経営という名のね」 ある年の暮れ、日本橋の半地下のうどん屋でぼくらは出会った。ビールのおかげで舌も滑らかになり、互いに饒舌になる。「…

Netflix『全裸監督』の次に来るものー藤田田賛歌。

無茶苦茶な人というのは面白い。常人には思いもつかないことをさも当然のようにやってのけ、その逸話は人類の歴史に彩りを添える。 今現在マイブームの無茶苦茶な人といえば、藤田田氏である。言わずと知れた日本マクドナルドの創業者だ。以下、藤田氏の著書…

SHOWROOMとN国と崎陽軒ー余計な一言でムダな敵を作ってはいけない、という話。

言葉というのはおそろしい。たった一言で人の心をひきつけるかと思えば、敵を自ら作りだしたりもする。 昨日見つけたうまい一言をご報告したい。敵を作らず広く味方を増やす言い回しだ。<ビジネスパートナーは「東京の東側の匂い」がする人がいい>(前田裕…

官僚は政治家のどこを見ているか。

官僚が重視する政治家ってどんな人?やっぱり政策通とか?中央官庁に勤める友人に聞いてみたことがある。彼の答えは非常にシンプル。「んー、選挙に強い人」 価値判断や感情論は極力まじえずに書く。実質的に政策立案の多くを担い、それを遂行する社会的使命…

赤い車と青い鳥

「今日は赤」と心に決めて家を出る。駅までのいつもの道をいつもどおりに歩いていく。ルートはいつもと変わらないのに、今日は何かが違う。赤い車、赤い看板に郵便ポスト。コカコーラの自販機に電車の赤いライン。次から次へと向こうから情報が飛び込んでく…

もしハーバード・ビジネススクール教授が吉本興業の騒動を見たら。

吉本興業騒動のことを、クリステンセンならこう言うだろう。「『破壊的イノベーション』のプレリュードだ」、と。 『破壊的イノベーション』はクレイトン・クリステンセンが提唱した考え方で、ジョブズやインテルのアンドルー・グローヴに支持され(ウォーレ…

読書感想文に何を書いていいかわからない人のためにー「お題」+「Q思考」ですべての文章は書き上げられる。

「なにを書いていいかわからない」。文章を書く際によく聞く悩みだ。この季節、読書感想文に頭を悩ませる親子も多い。 そんな場合におすすめなのが「Q思考」(ウォーレン・バーガー著 ダイヤモンド社の同名書より)、クエスチョニングの手法だ。すべての文章…

『Q思考』-ラーニングの次に来るのは、クエスチョニング。

ラーニングの次に「来る」のは、クエスチョニングではないか。ウォーレン・バーガー『Q思考』(ダイヤモンド社)を読んで、ぼくは予感した。 クエスチョニングというのは文字通り、「質問すること」、もっと言えば「問い続けること」である。昔ながらの教授…

「選択肢のないことを悩んでも仕方ない」というアドバイス。

「選択肢の無いことを悩んでも仕方ない」その昔、ある先輩から言われた言葉だ。 心を乱され悩まされることというのは次から次へと起こる。その中のある程度は選択肢があり、ある程度は選択肢が無い。選択肢がある場合にはおおいに悩むべきだろうし、選択肢が…

夏と幸せと、死。

「幸せって何かって?うーん…」『世界一幸せな国』デンマークで、ぼくはある老人に聞いてみたことがある。 「幸せね…。例えばね、今、わたし達はコーヒーを飲んでいる。ドーナツをつまみながら、テーブルをはさんで、こうして話している。…だが、わたしの友…

「ヤバい人」とのつきあいかた。

詳しくは書かないが、人の世には「ヤバい人」というのがいる。この場合の「ヤバい」はillなスキルを持ったdeepでdopeな「ヤバい人」ではなく、sickでgrossでcreepyな「ヤバい人」のことだ(しかしググるとsickはcoolの意味でも使うんですね。マジやべえ)。…

集合知ー誰に投票するのが『正解』かわからなくても投票に行こう、という話。

唐突だが、多様性ってなぜ大事なのだろうか?そんな話から始めてジェリービーンズとクイズ番組の話をし、最後は「投票に行こう」というゴールを目指したい。 ビンにジェリービーンズを850粒入れて56人の大学生に見せる。ビンの中に入っているジェリービーン…

ぼくたちの失敗。

「子どもは人類の研究開発部門」。児童心理学者、アリソン・ゴプニックの言葉だ。(ウォーレン・バーガー『Q思考』ダイヤモンド社 2016年 kindle版930/4563)。 子どもたちが人類の研究開発部門だとすると、子どもたちに成功をもたらすのは何だろうか?人類…

メキシコの朝

「この町でいちばん安い宿に連れて行ってください」タクシーの運転手にそう言って連れてきてもらったくせに、いざその宿に着いて部屋に入ると湧いてくるのは後悔ばかりだった。 メキシコシティからバスで半日、熱帯林を切り開いたまっすぐな道をひたすら揺ら…

7月21日は参議院選挙ー公助の話(後編)

自助・共助・公助について考えている。 www.hirokatz.jp www.hirokatz.jp www.hirokatz.jp 公助の話の続き。 前提として、この話は「公助なんて甘え。自助こそ至高」という考えの人に向けて書いている。そうした自助派の人が、「やっぱり自助は必要だけど、…

公助の話(前編)

ここのところ、自助・共助・公助についてまとめて考えている。 www.hirokatz.jp www.hirokatz.jp 今まで自助と共助について書いたので、少々荷が重いが、今度は公助について書く。 まず第一に、公助の起源(の一つ)は決して「慈善」だけではないということ…

<あなたと顧客との共同作業による新しい社会創造>(神田昌典氏)という言葉に打ちのめされた話。

〈あなたと顧客との共同作業による新しい社会創造〉ガツンと頭を殴られたような衝撃。『最強のコピーライティングバイブル』(横田伊佐男著 ダイヤモンド社)の、神田昌典氏による「監修者・解説者はじめに」の中のフレーズである。 医療機関の運営を通して…

塾生皆泳ー自助、共助、公助の話

自助、共助、公助。社会保障や防災・減災にどれも必要不可欠なもので、その必要不可欠性は勉強に置きかえるとイメージしやすい。成績を伸ばそうとすれば自習(=自助)は欠かせない。自習だけでは限界があるから友人と教え合い(=共助)したり、学校で先生…

いざというとき「おれがやる」と言えるのだろうか。

「おれがやる」。いざという時、自分はそう言えるのだろうかと自問している。 まずはじめに、誰かを貶すつもりは全くない。また、公的機関によるサポート、公助の必要性はどれだけ強調してもし過ぎることはない。その上で、「おれがやる」と言って立ち上がっ…

「2019年に日本文化の潮目が変わった」と、後世の歴史家は語るだろうという話。

「2019年に日本文化の潮目が変わった」と、後世の歴史家は語るだろう。 世界的な大企業トップが「終身雇用継続は無理」と言ったり、大臣が「年金だけでは足りないから2000万貯めとけ」と言ったりした2019年。発言内容に関し、訳知りなひとたちの感想は「まあ…

猫カフェとクラウドとウーバーイーツの共通点とは何か。

猫カフェとクラウドコンピュータとウーバーイーツの共通点は何か。たいへんマジメな話だ。 数年前、ITに詳しい友人Cが言った。「クラウドの本質ってわかる?いいかい、一人ひとりのユーザーがパソコンを持ってるだろ。たくさん演算したり、たくさん記録した…

〈たかが〉の三文字に、教育ジャーナリズムの達人おおたとしまさ氏の覚悟を見た話。

〈たかが〉の三文字に達人の覚悟を見た。 「中学受験すべきか否か、どっちがいい?」という問いに対し、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏がこう書いている。〈(略)たかが中学受験をする・しない、あるいは希望の学校に合格できる・できないで、人生の善…

接待の専門家はトランプ訪日をどう評するのか問題。

今いちばん会ってみたい専門家といえば「接待」の専門家だ。先日のトランプ大統領来日での「接待」をどう評価するか聞いてみたいのである。 2019年5月28日朝日新聞の社説では、今回の訪日について「もてなし外交の限界」と題し、〈トランプ氏をもてなす過剰…

子どもや若者に「そんな小さいことで悩むなんてバカらしい」というのは意味がない、という話。

「子どもや若者にさ、『そんな小さいことで悩むなんてバカらしい』とか言う大人いるじゃない?あれ、意味ないよね」 確かこんな初夏、銀座の街が夕暮れに染まる時間帯だった。いたずらな小さい天使がビルの陰から顔を覗かせた先にそのバーはあって、店の軒先…

ピンクのクラウン・タクシー、乗るか否か。

朝からエラいものを見た。ショッキング・ピンクのタクシーである。以前にニュースになった、どピンクのクラウンのタクシー版だ。あんな色のタクシーは初めて見た。 それで考えたのは、このタクシーに乗るべきか否かであった。全然乗る必要のないタイミングだ…

統一地方選、戦後最低の投票率ーもしインターネット投票が導入されたらなにが起こるか。

先日の統一地方選の投票率は残念ながら戦後最低だったという。新聞によれば、市議選の平均は45.57%とのことで、半数以上の人が選挙に行かなかったことになる。 投票率が低いとエキセントリック過ぎる人が組織票で当選してしまったりするのでやはりある…

スマホアプリ「Coke on」に思う。

人の世でモノゴトを継続的に動かしていくには「義」「情」「理」「利」が必要である。順番や割合はさまざまだが、「義」がないところに多くの人は集まらないし、「情」が動けばモノゴトは継続する。「理」があればあんまりブレずに済むし、「利」があるから…